コラム
AIネイティブなマーケティング組織のつくり方|企業が何を変えるべきか
AIネイティブなマーケティング組織とは何か。業務の切り分け・意思決定の権限・評価基準・ルール整備という4つの要素と、AI人材育成の進め方をmalnaの実践から解説します。
公開日:2026年8月9日
執筆・編集:malna編集部(編集方針)

「AIネイティブ」という言葉を、経営会議や採用の場で耳にする機会が増えたと感じている方は多いのではないでしょうか。当社にも、マーケティング部門をAIネイティブな組織にしたいというご相談をいただく機会が増えています。
先に、本記事が扱わない範囲を明確にしておきます。「AIネイティブ」という言葉は、AIが当たり前に存在する環境で育った世代や個人を指す文脈(AIネイティブ世代論)と、AIを前提にシステムを設計する開発基盤・アーキテクチャの文脈(AIネイティブ開発)でも使われています。本記事はどちらも扱いません。当社が本記事でお伝えしたいのは、マーケティング組織を実際にAIネイティブへ変えていくときに、何を設計し直す必要があるのかという実務の話です。
当社は2026年からClaude Code(エージェント型のAI)を全社で導入し、マーケティング支援の実務そのものを大きく組み替えてきました。その過程で強く感じたのは、AIネイティブな組織づくりは「AIツールを導入すること」ではなく、「業務の切り分け方・意思決定の権限・評価の基準・ルールを組織側で先に決めること」だという点です。本記事では、当社の実体験をもとに、その考え方と進め方をご紹介します。
「AIネイティブなマーケティング組織」とは
AIネイティブなマーケティング組織とは、AIを既存の業務フローに後付けするのではなく、AIの活用を前提に業務プロセス・意思決定・評価制度を組み直した組織のことだと当社は考えています。
この考え方は、外部の専門メディアでも取り上げられています。広告業界メディアAdverTimesが2025年3月に掲載した記事では、AIネイティブな組織を「人を中心としながら、業務をタスク単位に分割し、それぞれを最適なツールに任せていく体制」と説明しており、人はタスクの全体をマネジメントする役割に専念する点が特徴とされています(参照:AdverTimes.「『AIネイティブ』な組織の構築とマーケティング領域への活用、どう進めるか」2025年3月25日、2026年8月確認)。また、電通グループの並河進氏が2025年10月に上梓した書籍『AIネイティブマーケティング』では、AIネイティブマーケティングを「業務プロセスがダイナミックに再構築される」状態と位置づけています(参照:電通「AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる」書籍紹介ページ、2026年8月確認)。
同様の議論は他の専門機関の分析でも見られます。リクルートワークス研究所が2025年12月に公開したコラムでは、AIネイティブカンパニーを「事業プロセスがAI活用によって根本から変わることを所与として、企業運営をしていくこと」と位置づけ、国内ではDeNAや電通グループがAIネイティブを目指す戦略を掲げていることを紹介しています(参照:リクルートワークス研究所「AIネイティブカンパニーでは事業プロセスが根本から変わる」2025年12月12日、2026年8月確認)。同コラムでは、AIネイティブな考え方のもとでは「戦略を熱心に立てるより、まずAIに施策を実行させ、市場の反応を見ながら繰り返し試す」という発想が紹介されていますが、これは一つの立場・見解として興味深い一方、すべての業務にそのまま当てはめられる考え方だとは当社は捉えていません。当社が本記事で強調したいのは、AIに何を任せ、どこで人が判断するかという線引きを、組織として先に決めておくことの重要性です。
つまり、AIネイティブという言葉が指すのは「AIを使っている組織」ではなく、「AIがいることを前提に、業務のつくり方そのものを設計している組織」です。この違いは小さく見えて、実際の組織運営では大きな差になります。既存の業務フローにAIツールを足すだけでは、担当者個人のスキル差が成果の差になってしまいがちです。業務プロセス自体を組み直せているかどうかが、AIネイティブかどうかの分かれ目だと当社は考えています。
マーケティング組織をAIネイティブに変えるとき、実際に変える4つのもの
AIネイティブな組織をつくる際に、当社が実際に手を入れる必要があると感じているのは、次の4つです。業務別に「どこまでAIに任せられるか」という詳細な仕分けはAIエージェントはマーケティングをどう変えるかに譲り、本記事では一段上の「その仕分けを、組織としてどう決めるか」という設計に絞ってお伝えします。
業務の切り分け|「誰が」「どう」線引きを決めるか
まず必要なのは、業務ごとの「AIに任せる/人が判断する」の線引きを、誰がどう決めるのかを組織として定めることです。現場の担当者ごとに個別判断させてしまうと、同じような業務でも人によって任せる範囲がばらつき、後から基準を統一しづらくなります。
当社では、業務を最も理解している担当者が最初の線引き案を出し、その業務の最終責任者が確認して決定する、という二段構えにしています。線引きそのものをすべて経営層が決めようとすると現場の実情と合わない基準になりやすく、逆に現場だけに委ねると「なんとなく任せている」状態が固定化してしまうため、案を出す人と決める人を分けることが重要だと感じています。
線引きの基準としては、「判断基準がすでに決まっているか」「繰り返し発生するか」「間違えたときにやり直しが利くか」という3つの条件を、当社は目安として使っています。この基準を満たす業務ほどAIに任せやすく、満たさない業務ほど人の判断を残すべきだという考え方です。
業務の切り分けを実際に設計する際、当社は次の手順で進めることを勧めています。
- 部門・チームの業務を洗い出す:日々の業務を思いつく限り書き出す。単発の業務よりも、繰り返し発生する業務を優先して拾う
- 3条件で担当者自身が仮に判定する:判断基準の有無・繰り返し発生するか・やり直しが利くかを、業務を最もよく知る担当者が一次判定する
- 最終責任者が判定内容を確認し、範囲を確定する:担当者の判定をそのまま採用するのではなく、責任者の視点で妥当性を確認してから決定する
- 小さい範囲から実際に任せてみる:一度にすべての業務を切り替えず、影響範囲が小さいものから試す
- 一定期間後に判定を見直す:業務内容やAIの精度は変わっていくため、任せる/任せないの線引きを固定化しない
この線引きは一度決めて終わりではなく、業務ごとに試しながら見直していくものだと当社は感じています。最初から完璧な基準をつくろうとするより、小さく任せて調整していくほうが現実的です。
意思決定の権限|誰が「AIの出したものを通していいか」を決めるか
AIが出した企画案や原稿を、誰の承認があれば実行に進めてよいのか。この権限設計を決めておかないと、AIの出力の質にかかわらず、確認漏れや責任の所在が不明確な状態が発生します。
当社では、業務の影響範囲が大きいほど確認する人数を増やすのではなく、「誰が最終的に責任を持つか」を一人に定めることを重視しています。実際に、あるクライアント向けの発信物についてAIが作成した原稿を複数人で確認する運用にしていた時期がありましたが、「みんなで見ているから大丈夫」という空気になり、結果的に誰も一次情報の事実確認まで踏み込んで見ていなかったことがありました。関係者全員が確認する体制は、一見安全に見えても、実際には誰も本気で見ていない状態を生みやすいのだと痛感し、以降は業務ごとに最終承認者を一人だけ決める運用に変えています。
意思決定の権限を設計する際、当社は業務ごとに次の点を決めておくことを勧めています。
- 最終承認者を1人特定する:関係者全員に確認を回すのではなく、責任を持つ人を1人に絞る
- 承認者が判断に必要な材料を明確にする:AIの出力そのものだけでなく、判断の根拠(参照した情報・確認済みの事実)も合わせて渡す
- 承認者が不在の場合のエスカレーション先を決めておく:担当者の自己判断だけで進めてしまう事態を防ぐ
- 承認の記録を残す:誰が・いつ・何を承認したかを、後から追える状態にしておく
なお、AIの出力を人がどこで止めて確認するかという設計思想は、AIエージェントの実務でも重要な論点として扱われています。重要な判断の手前で人の承認を挟む考え方は「Human-in-the-Loop(人間の介入)」と呼ばれ、すべてのプロセスを全自動化するのではなく、重要な意思決定のタイミングで人間の承認を挟むようにワークフローを設計する手法として紹介されています(参照:smartcodes「自律型AIエージェントのガバナンスと評価基準:本番運用を見据えた組織設計ガイド」、2026年8月確認)。当社が業務ごとに最終承認者を一人定めているのも、この考え方に近いものだと捉えています。
評価・採用の基準|スキルよりスタンスを見る
AIネイティブな組織では、特定のAIツールを使えることそのものは評価の基準になりにくいと当社は考えています。ツールは半年単位で入れ替わるからです。当社が評価・採用の基準として重視するようになったのは、「AIを使って何を実現しようとしているか」という視点と、新しい環境の変化を「面白い」と捉えられるかどうかというスタンスです。
評価・採用の基準を具体的に見直す際、当社は次のように進めています。
- 評価項目から個別ツールのスキル項目を外す:特定のAIツールの操作習熟度を評価軸に置かない
- 「AIを使って何を実現しようとしているか」を面談・評価シートの質問に落とし込む:抽象的な意欲確認ではなく、実際に試した業務・工夫した点を具体的に語ってもらう
- 変化を面白がるスタンスを、過去の行動事例で確認する:新しいツールやルール変更に対して過去どう向き合ったかを聞く
- 評価者どうしで基準をすり合わせる場を設ける:評価者によって基準がぶれると、評価される側の納得感が損なわれる
ルールの整備|機密情報・生成物の扱いを先に決める
AIを業務に組み込む前に、顧客情報や未公開の数値をAIサービスに入力しないことなど、最低限の運用ルールを言語化しておく必要があります。ルールが整備されていない状態で現場が個別に判断すると、情報の取り扱いが担当者ごとにばらついてしまいます。
情報ルールを整備する際、当社は次の手順を踏んでいます。
- 入力してはいけない情報の類型をリスト化する:顧客の個人情報・契約条件・未公開の数値などを具体的に列挙する
- 利用するAIサービスごとに、学習利用・オプトアウトの設定を確認する運用を決める:サービスの仕様は変わるため、都度の目視確認を前提にする
- ルールの周知方法と、違反が起きた場合の対応を決めておく:ルールを作っただけで終わらせない
- 業務の切り分けと同様に、ルールも定期的に見直す:新しいAIサービスの登場や仕様変更に合わせて更新する
組織規模による進め方の違い|少人数チームと複数部門組織
ここまでの4要素(業務の切り分け・意思決定の権限・評価の基準・ルールの整備)は、組織の規模によって進め方の重さが変わると当社は考えています。当社のような少人数の組織で成立している進め方を、複数部門を持つ大きな組織にそのまま当てはめようとすると、うまくいかない場面が出てきます。
当社のような少人数チームでは、棚卸しも線引きの決定も、経営層と現場が同じ場で完結させやすいという利点があります。「業務の切り分け|『誰が』『どう』線引きを決めるか」で紹介した「案を出す人」と「決める人」を分ける二段構えも、部門をまたがずに社内で完結します。実際に当社では、会議の議事録作成という一つの業務について、全メンバーが同じ場で3条件に照らして判定し、その日のうちに任せる範囲を決めることができました。
一方、複数の部門を持つ組織では、部門ごとに扱う業務の性質や機密度が異なるため、同じ基準をそのまま全社に当てはめると無理が生じます。部門ごとに独自の判断で進めてよい範囲と、全社で統一すべき範囲を分けて設計する必要が出てきます。この場合、各部門の状況を把握しながら基準の目線合わせをする横断的な役割(AI活用の知見を集約し、各部門への支援を担う中核チームのような位置づけ)を置く進め方が、外部の解説記事でも紹介されています(参照:株式会社AX「【決定版】AIネイティブ組織の作り方|2026年の成功戦略と構築ロードマップ」、2026年8月確認)。この記事では、AI活用を全社的に推進する中核組織(Center of Excellence)が知見の集約とガイドライン策定を担い、各部門に配置した推進担当者と連携する体制が紹介されています。当社自身は少人数組織のため、この体制をそのまま採用した実績はありませんが、部門数が増えるほど、上記の基準を「誰が最終的に決めるか」を部門横断で一段階増やす発想は参考になると考えています。
| 観点 | 少人数チーム(当社の規模感) | 複数部門を持つ組織 |
|---|---|---|
| 業務の棚卸し | 全員が同じ場で棚卸し・判定を完結できる | 部門ごとに棚卸しを行い、共通する業務と部門固有の業務を分ける |
| 意思決定の権限 | 経営層・現場責任者がそのまま最終承認者を兼ねやすい | 部門ごとの承認者に加え、部門をまたぐ判断の窓口を別途決める必要がある |
| 評価・採用の基準 | 全社共通の基準をそのまま使いやすい | 部門ごとの業務特性を反映しつつ、根本のスタンスは全社共通にする |
| 情報ルール | 全社で1つのルールに統一しやすい | 部門ごとの機密度の違いを踏まえ、共通ルールと部門追加ルールを分ける |
組織の規模にかかわらず共通して言えるのは、基準を先に全社完璧に整えようとするより、まず小さい範囲で試してから広げるほうが現実的だという点です。複数部門の組織であっても、最初の一部門で上記4要素を試し、そこで見えた課題を踏まえて他部門に広げていく進め方を当社は勧めています。

当社が実際に踏んだ順番
当社がAIネイティブ化を進めた際は、ツールの導入よりも先に、組織側の設計を順番に進めました。
- 全社員の業務を棚卸しした:まず全メンバーの日々の業務を一つひとつ書き出し、それぞれが3条件(判断基準が決まっているか・繰り返し発生するか・やり直しが利くか)に当てはまるかを全員で判定しました。
- 任せる/任せない、の線引きを決めた:棚卸しの結果、3条件をすべて満たす業務として最初に挙がったのが、会議の議事録作成でした。判断基準(何を記録するか)が決まっており、毎回発生し、記録に誤りがあっても後から修正できる業務だったため、当社では以前利用していた外部の文字起こしサービスを解約し、Claude Codeで音声を自動的に文字起こしして共有する仕組みに切り替えました。同様の理由で、新しいメンバーが入社した際のオンボーディングフローの整備も、これまでは都度やり方を考えながら人が対応していたものを、AIで仕組み化しました。
- 評価・採用の基準を見直した:スキルの有無だけでなく、AIを使って何を実現しようとしているかを面談で確認するようにしました。
この順番で進めたことで、「AIを使っているかどうか」ではなく「業務の任せ方が組織として決まっているかどうか」に、社内の意識が変わっていったと感じています。

つくる過程で陥りやすい失敗パターン
AIネイティブな組織づくりを進める中で、当社自身の試行錯誤や支援先とのやり取りを通じて、陥りやすい失敗のパターンがいくつか見えてきました。
ツールを配って終わってしまう
AIツールの契約や導入研修だけを実施し、その先の業務プロセスの見直しに手をつけないケースです。ツールを使えるようにすることと、業務の任せ方を組織として決めることは別の作業だと当社は考えています。ツールを配っただけでは、使う人と使わない人の差がそのまま成果の差になってしまいがちです。
経営層・部門長が自分で触らずに判断を先送りする
経営層や部門長がAIを自分で試さずに、導入の判断だけを現場に委ねてしまうケースです。実際に触ってみないと、どの業務がどこまで任せられるかの感覚がつかめません。判断を先送りしている間に、現場ごとに使い方がばらつき、後から統一しづらくなることも少なくありません。
「AIに全部任せる」に振れすぎて信頼を失う
反対に、最終判断や公開の確認まで含めてAIに任せてしまい、事実確認が不十分な内容やブランドの世界観に合わない表現が外部に出てしまうケースもあります。AIネイティブな組織は「AIに任せる範囲を広げること」がゴールではなく、任せる範囲と人が判断する範囲を組織としてはっきり決めておくことがゴールだと当社は考えています。
ルールを作った時点で満足し、形骸化させてしまう
「ルールの整備|機密情報・生成物の扱いを先に決める」で触れた情報ルールや、他の基準を一度言語化したこと自体で満足してしまい、その後の周知・見直しをしないまま放置してしまうケースもあります。この点は他の専門メディアでも指摘されており、どれほど高機能なAIツールを導入しても、活用できる組織の土台が整っていなければツールは十分に使われないまま形骸化してしまうと解説されています(参照:Helpfeel「AI導入に失敗する企業の共通点!AI-Readyでない組織が陥る5つのパターン」2026年7月8日更新、2026年8月確認)。ルールは一度作って終わりではなく、業務の線引きと同様に、定期的に見直す前提で設計しておくことが必要だと当社は考えています。
AIネイティブ化の優先順位|何から着手すべきか
これからマーケティング組織のAIネイティブ化に着手する場合、当社は次の順序で進めることをお勧めしています。
- 既存業務をすべて棚卸しする:まず現状の業務を書き出さないと、何を任せられるかの判断基準が定まりません。
- 「任せる/人が判断する」の線引きを、小さい範囲で決める:全業務を一度に見直すのではなく、影響範囲が小さい業務から線引きを試します。
- 最終判断の責任者を業務ごとに一人決める:確認する人数を増やすのではなく、責任の所在を明確にします。
- 評価・採用の基準と、情報の取り扱いルールを言語化する:現場が個別に判断しなくてよい状態をつくります。
順序を飛ばして一気に全社展開しようとすると、現場の合意形成が追いつかず、結果的に定着が遅れる傾向があると当社は感じています。複数部門を持つ組織の場合は、「組織規模による進め方の違い」で触れたとおり、まず一部門で上記の順序を試し、そこで見えた課題を踏まえて他部門に広げていく進め方が現実的です。
マーケティング部門のAI人材育成|内製育成と外部研修の使い分け
マーケティング部門のAI人材育成とは、特定のAIツールの操作を教えることではなく、前章で挙げた「業務の棚卸し」「任せる範囲の線引き」「評価基準の見直し」を、部門のメンバー一人ひとりが自分の業務で実践できる状態にしていくことだと当社は考えています。ツールの使い方研修だけを実施しても、現場の業務プロセス自体が変わらなければ定着しないためです。
内製育成を軸にすべき理由
当社がAI人材育成において外部委託より内製を軸に据えているのは、AIで何を任せられるかの判断基準が、部門・業務ごとの実情に強く依存するためです。汎用的なツール操作研修を受けただけでは、自部門のどの業務にどう当てはめるかまでは身につきません。「当社が実際に踏んだ順番」で紹介した当社の進め方(業務の棚卸し→線引きの決定→評価基準の見直し)は、そのまま人材育成のステップとしても機能すると当社は感じています。
- 業務を棚卸しし、AIに任せられる候補を洗い出す:担当者自身に、自分の業務を書き出してもらうところから始めます。他者の業務を外から見て育成計画を立てるより、担当者本人が「この業務は任せられそうだ」と気づく過程を伴うほうが、定着しやすいと当社は感じています。
- 小さい業務から実際に任せてみる:最初から難易度の高い業務で試すと、うまくいかなかったときに「AIは使えない」という結論に飛びつきやすくなります。3条件(判断基準が決まっているか・繰り返し発生するか・やり直しが利くか)を満たす小さな業務から着手するのが、育成の入り口としても有効です。
- 成功・失敗の両方を部門内で共有する:一人が試した結果を個人の中に留めず、部門内で共有する場を設けることが、育成のスピードを左右します。当社では、うまくいかなかった試みも含めて共有することを重視しています。
座学の研修だけで終わらせず、実際の業務に接続するところまでを育成計画に組み込むことが、部門としてAI人材を育てる上での分かれ目だと当社は考えています。なお、育成の対象は現場担当者に限りません。経営層には投資判断の材料として、部門長には自部門の業務再設計の材料として、それぞれ異なる粒度の理解が必要になるとの指摘もあり(参照:株式会社AX「【決定版】AIネイティブ組織の作り方|2026年の成功戦略と構築ロードマップ」、2026年8月確認)、当社も面談や社内共有の場では、相手の役割に応じて伝える粒度を変えるようにしています。
外部研修を使う場合に失敗しない選び方
内製育成を軸にしつつも、基礎知識のインプットや、社外の知見を取り入れる目的で外部研修を併用すること自体は有効だと当社は考えています。ただし、研修会社の比較や「おすすめの研修N選」といった選び方は本記事の範囲外とします(各社の提供内容・費用は変動するため、断定的な比較情報は掲載しません。実際に選定する際は各社の公式サイトで最新の提供内容をご確認ください)。
当社が支援の現場で見てきた範囲では、座学だけで完結する研修は、受講後に現場の業務へ接続する工程が組まれていないと、定着しにくい傾向があると感じています。外部研修を選ぶ際の基準として、当社は次の点を確認することをお勧めしています。
| 確認する観点 | 座学で終わりやすい研修 | 業務に接続しやすい研修 |
|---|---|---|
| カリキュラムの内容 | ツールの操作方法の説明が中心 | 自社の実業務を題材にした演習が含まれる |
| 受講後のフォロー | 研修当日で完結し、その後の接点がない | 一定期間後の実践状況の振り返りが組まれている |
| 対象範囲 | 全社共通の汎用内容のみ | マーケティング部門の業務内容に合わせて調整できる |
Q. 研修助成金は使えますか? 助成金・補助金の対象になるかどうかは制度や自治体・年度によって条件が変わるため、本記事では金額や適用可否を断定しません。利用を検討する場合は、厚生労働省・中小企業庁等の公募要領を執筆時点の最新情報でご確認いただくか、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
よくある質問
Q1. AIネイティブ企業とはどんな企業ですか? 当社は、AIを既存の業務に後付けするのではなく、業務プロセス・意思決定・評価制度をAIの活用を前提に組み直している企業だと捉えています。AIツールを使っていることそのものより、業務のつくり方が変わっているかどうかが分かれ目です。
Q2. AIネイティブ人材とはどのような人ですか? 特定のAIツールを使いこなせることよりも、AIを使って何を実現しようとしているかという視点を持ち、環境の変化を「面白い」と捉えて自分から動ける人だと当社は考えています。ツールは入れ替わるため、ツールへの習熟度だけを基準にすると評価がすぐに古くなってしまいます。
Q3. AIネイティブ化とは、具体的に何をすることですか? 当社の理解では、AIツールを導入することではなく、業務の切り分け・意思決定の権限・評価の基準・情報取り扱いのルールという組織側の仕組みを、AIの活用を前提に設計し直すことを指します。
Q4. AIネイティブな組織と、AIツールを導入しただけの組織は何が違いますか? 最も大きな違いは、業務の任せ方や意思決定の権限を組織のルールとして決めているかどうかです。AIツールを導入しただけの組織では、任せる範囲が担当者の個人判断に委ねられがちで、人によって使い方がばらつきます。AIネイティブな組織では、その線引きと責任の所在があらかじめ決まっています。
Q5. 少人数の会社でも、大企業と同じようにAIネイティブ化を進める必要がありますか? 必ずしも同じ体制を用意する必要はないと当社は考えています。「組織規模による進め方の違い」で触れたとおり、少人数の組織であれば、棚卸しから線引きの決定までを同じ場で完結させやすく、複数部門の組織のような横断的な調整役を別途置く必要性は相対的に低くなります。重要なのは体制の大きさではなく、業務の切り分け・意思決定の権限・評価の基準・情報ルールという4つの要素を、組織の規模に見合った形で決めておくことです。
さいごに
AIネイティブなマーケティング組織をつくることは、AIツールを導入することではなく、業務の任せ方・意思決定の権限・評価の基準・情報の取り扱いルールを、組織として先に決めることだと当社は考えています。ツールの進化を追いかけるだけでは、この土台は整いません。着手する際は、業務の棚卸しから始め、小さい範囲で線引きを試し、責任者を一人に定め、評価とルールを言語化するという順番(「AIネイティブ化の優先順位|何から着手すべきか」)を意識していただければと思います。組織の規模が大きくなるほど、部門横断の調整が必要になりますが、進め方の基本は変わりません。この土台づくりを部門のメンバー一人ひとりに広げていくのが、「マーケティング部門のAI人材育成|内製育成と外部研修の使い分け」で触れたAI人材育成の位置づけです。
当社自身も、この土台づくりはまだ試行錯誤の途中です。それでも、業務を棚卸しして線引きを決め、評価の基準を見直すという順番で進めたことで、社内の意識が少しずつ変わってきたと感じています。「自社のマーケティング組織をAIネイティブに変えたいが、何から手をつければよいか分からない」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ当社までお気軽にご相談ください。
自社のAI導入・AI活用について相談したい場合は、企業からのご相談もご検討ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



