コラム
市場調査・マーケティングリサーチはAIでどこまで速くなるか|デスクリサーチから示唆出しまでの実践フロー
市場調査・競合分析にAIをどう組み込むか、デスクリサーチから一次情報の確認、示唆出しまでの実践フローを整理します。BtoB・BtoCで重点がどう変わるかもあわせて解説します。
公開日:2026年8月9日
執筆・編集:malna編集部(編集方針)

以前当社では「マーケターが"最低限"押さえておくべき競合調査方法」という記事で、競合分析の目的整理から情報収集、活用方法までを解説しました。あの記事を書いた時点では、競合調査といえば人が一つひとつサイトを見て回り、スプレッドシートに転記していく作業が前提でした。
それから月日が経ち、当社では生成AIを日常的に使うようになりました。市場調査や競合分析の進め方も、当時とは変わった部分があります。この記事では、その変化を踏まえて「デスクリサーチ→競合分析→示唆出し」という調査の一連の流れを、AIをどう組み込んで進めているかという観点で書き直してみます。あわせて、BtoBとBtoCでリサーチの重点がどう変わるかについても触れます。
なお、本記事で扱うのは外部情報のリサーチに限定します。自社の広告データやGA4のアクセスデータをAIで分析する話は業務の性質が異なるため、別の記事で扱う予定です。また、リサーチに使えるプロンプトを網羅的に集めた記事も別途用意する予定なので、本記事では考え方とフローの説明に絞ります。
1. マーケティングリサーチにAIを使うと何が変わるか
マーケティングリサーチAIとは、市場動向・競合・顧客インサイトなど社外の情報を、生成AIを使って収集・整理・分析する取り組みを指します。
結論から言うと、AIを使っても「調査の目的を決める」「情報の真偽を判断する」「示唆を経営判断に落とし込む」という部分は人の仕事のままです。変わるのは、その前段にある情報収集と一次整理にかかる時間です。
以前は、競合他社のサービスサイト・プレスリリース・レビューサイトを一つずつ開いて内容を読み、要点をメモに書き出すという作業に多くの時間を使っていました。今は、URLを渡して要約させる、複数のページを横断して共通点を聞く、といった形でAIに一次整理を任せられるようになっています。
一方で、AIが提示する情報をそのまま信じてはいけない場面も増えました。生成AIは、存在しない数値や事実をもっともらしく答えてしまうことがあります(いわゆるハルシネーション)。この点は、AIを使う調査フローの設計上、避けて通れない論点です。3章で改めて触れます。
2. AIを使ったデスクリサーチの実践フロー
デスクリサーチ(机上調査)にAIを組み込む場合、当社では次の順番で進めています。
- 調査の目的とスコープを先に固める:「何のために」「どの範囲を」調べるのかを、AIに聞く前に自分の言葉で書き出します。ここをAIに丸投げすると、後工程がすべてぶれます。
- AIに一次情報の在り処を探させる:検索機能を持つAIを使い、公式サイト・プレスリリース・業界レポートなど、まず「どこに情報があるか」の当たりをつけます。
- 見つけた一次情報をAIに要約させる:URLやPDFを渡して要約させることで、長文の資料を読む時間を圧縮できます。ただし要約はあくまで下読み用です。重要な数値・主張は元のページで必ず確認します。
- 要約結果を並べて構造化する:競合ごと・項目ごとに表形式でまとめ直します。この段階もAIに手伝わせられますが、項目の立て方(何を比較軸にするか)は人が決めます。
ここでいう「検索機能を持つAI」の代表が、ChatGPT・Claude・Geminiにそれぞれ搭載されている調査系の機能です。ChatGPTのDeep Researchは、複数のWeb情報源を横断して引用付きのレポートを作成する機能です(OpenAI公式ヘルプセンター「ChatGPT の deep research」、2026年8月確認)。ClaudeのResearchは、Web検索と社内文書の両方を横断して調査レポートを作成します(Anthropic公式発表「Claude takes research to new places」、2026年8月確認)。GeminiのDeep Researchは、デフォルトでGoogle検索を情報源として、テーマに沿った調査をまとめます(Google公式ヘルプ「Gemini アプリで Deep Research を利用する」、2026年8月確認)。いずれも各社のプラン・利用回数・料金は変更される可能性があるため、実際に使う際は公式ヘルプで最新の条件を確認してください。
汎用LLM以外にも、リサーチに特化したAIツールがあります。Perplexityは、Web検索の結果に必ず出典番号を付けて回答する「引用付きの検索」に特化したツールで、公式サイトでは「信頼できるリサーチのためのAI搭載アンサーエンジンで、検証可能な引用に裏付けられた最新の回答を返す」と説明されています(Perplexity公式「Getting started」、2026年8月確認)。GoogleのNotebookLMは、2026年8月時点で「Gemini Notebook」に名称が変わっており、公式サイトでは同一製品であることが明記されています。自分がアップロードした資料の中だけを根拠に回答する仕組みのため、社内資料や複数の業界レポートを横断して整理したいときに向いています(Google公式「Gemini Notebook」、2026年8月確認)。また、査読済みの学術論文に絞って検索できるConsensusのようなツールもあり、公式サイトでは「2億5,000万本を超える研究論文を検索・分析できる」としています(Consensus公式サイト、2026年8月確認)。エビデンスの厳密さが求められる領域では選択肢になりえます。当社では、これらのどれが一番優れているかを断定することはせず、「何を調べたいか」に応じて使い分けています。
この4ステップのうち、AIが得意なのは2と3です。1と4の「何を調べるか」「どう構造化するか」の設計部分は、当社の経験では人が握ったほうが精度が上がります。
3. 一次情報と二次情報を見分け、真偽を確認する(ファクトチェックの手順)
AIによる調査で最も注意すべきなのが、この工程です。生成AIは検索結果を要約する際、元のページに書かれていない数値を作ってしまうことがあります。ここで鍵になるのが、情報を「一次情報」と「二次情報」に分けて扱う視点です。
一次情報とは、その情報を最初に発信した当事者による資料を指します。二次情報とは、一次情報を誰かが編集・要約・引用した情報を指します。AIが要約の根拠に使っている情報がどちらに当たるかを意識するだけで、裏取りすべき優先順位が見えてきます。
| 情報の種類 | 具体例 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 一次情報 | 官公庁・業界団体の統計、企業のIR資料・決算資料・プレスリリース、特許情報、学術論文、公式サイトの一次記載 | AIの回答の根拠としてこれらが挙がった場合は、リンク先を開いて該当箇所を自分の目で確認したうえで採用する |
| 二次情報 | ニュース記事、比較・まとめサイト、SNS投稿、個人ブログ、AIの回答そのもの | 一次情報を編集・要約したもので、孫引きや誤読が混ざる可能性がある。参考にはするが、重要な主張の根拠を二次情報だけで済ませず、可能な範囲で一次情報まで遡る |

このうえで、当社では以下を徹底しています。
- 数値・固有名詞は必ず元ページで裏取りする:AIが提示した数値は、そのまま資料に転記せず、リンク先の一次情報を自分の目で確認してから採用します。
- 出典が示せない情報は使わない:AIが「〜と言われています」的な表現で答えてきた内容は、出典を追加で聞き、出典が示せなければ調査結果から外します。
- 古い情報が混ざる前提で見る:AIの回答には、更新されていない古いデータが混在することがあります。日付が明記されているか、公式ページの最終更新日と一致するかを確認します。
このあたりは、AIを使わない従来の競合調査でも本来やるべきことでした。AIによって情報収集が速くなった分、確認作業を省略してしまうリスクも同時に高まっています。速くなった分だけ、確認の手間は減らさない、という姿勢が必要だと当社では考えています。
4. 競合分析にAIをどう組み込むか
以前の記事で書いた「直接競合・間接競合・潜在的競合」という競合の分類の考え方自体は、AIを使っても変わりません。変わるのは、各競合について情報を集める工程のスピードです。
AIに任せやすい作業と、人が担うべき判断を整理すると、次のようになります。
| 工程 | AIに任せやすい | 人が担うべき判断 |
|---|---|---|
| 競合の洗い出し | キーワードから候補企業を挙げさせる一次案出し | 「本当に自社と競合するか」の最終判断 |
| サービス内容の把握 | 公式サイト・プレスリリースの要約 | 要約に表れない訴求の意図の読み取り |
| 価格・機能の比較表作成 | 表形式への整形 | 比較軸(何と何を並べるか)の設計 |
| レビュー・口コミの傾向把握 | 大量レビューの傾向要約 | 「なぜその評価になっているか」の解釈 |
| 広告・SNS運用の傾向把握 | 投稿内容の分類・要約 | 施策の意図・優先順位の推測 |
表の右列、つまり「なぜそうなっているか」を解釈する部分は、当社の経験では今のところAIに任せきるのが難しい領域です。AIは事実の整理は得意でも、業界の文脈や自社の立ち位置を踏まえた解釈は、担当者の理解度に左右されます。
5. BtoBとBtoCでAIリサーチの重点はどう変わるか
ここまで書いてきたAI活用の考え方自体は、BtoB・BtoCどちらのビジネスにも共通します。一方で、「どこから情報を集めるか」「AIに何を任せるか」の重点は、BtoBとBtoCで変わってきます。
| 観点 | BtoB | BtoC |
|---|---|---|
| 情報源の重点 | 業界レポート、IR資料・決算資料、展示会・セミナー資料、専門メディア | SNS投稿、レビュー・口コミサイト、トレンドまとめ記事 |
| AIに任せやすい作業 | 長文の業界レポートやIR資料の要約、専門用語の整理 | 大量のSNS投稿・レビューの傾向分析、感情表現の分類 |
| 人が担うべき判断 | 稟議・複数部門にまたがる意思決定プロセスを踏まえた解釈 | 投稿の熱量や文脈(皮肉・ネタ的な表現かどうか)の読み取り |
| 注意したい点 | ニッチな業界では一次情報自体が少なく、AIでは代替できない専門家への直接ヒアリングが必要になる場面がある | SNS上の話題化と実際の購買行動が一致しないことがあり、AIが出す「盛り上がっている」という要約だけで判断しない |
BtoB領域、とくに医療・製薬・金融のようにエビデンスの厳密さが求められる業界では、2章で触れたConsensusのような学術論文検索AIが役立つ場面があります。一方、BtoCの消費財・サービス領域では、SNS上の口コミやレビューをAIに大量に読ませて傾向をつかむ使い方の比重が大きくなります。
どちらの場合も、AIが出す「傾向」や「要約」を鵜呑みにせず、実際の投稿・記事・資料に戻って確認するという3章・4章の姿勢は変わりません。
6. 集めた情報から示唆を出す
情報を集めて整理するだけでは、調査は終わりません。「この情報から何をすべきか」という示唆に落とし込む工程が本来の目的です。
ここでのAIの使い方は、情報収集のときとは少し違います。当社では、整理済みの調査結果をAIに読ませたうえで、次のような聞き方をしています。
- パターンを聞く:「集めた競合情報の中で、共通している訴求ポイントは何か」を聞き、見落としがちな共通項に気づくきっかけにします。
- 反証を聞く:自分が立てた仮説をAIにぶつけ、「この仮説に反する情報は集めた中にあるか」を確認します。都合の良い情報だけを拾ってしまう思い込みを防ぐためです。
- 優先順位のたたき台を作らせる:整理した示唆をもとに、施策の優先順位案を出させます。ただし最終的な優先順位の決定は、自社のリソースや戦略との整合を見て人が行います。
示唆出しの段階でAIに頼りすぎると、「もっともらしいが当たり障りのない結論」に着地しがちです。当社では、AIが出した示唆案をそのまま採用せず、必ず「なぜそう言えるのか」を元データに戻って確認するようにしています。
7. 自社での運用体制について
当社では、こうした外部リサーチだけでなく、記事執筆の際にも複数の視点からレビューし合う体制を、人手を介さない形で回しています。調査で集めた情報を鵜呑みにせず、複数の視点で検証してから意思決定や公開に使うという姿勢は、社外情報のリサーチにおいても社内の情報発信においても同じです。
一次情報の鮮度についても、記事の更新齢やリンク切れを定期的にチェックする仕組みを当社では運用しています。市場調査の資料も同様に、一度作って終わりではなく、定期的に情報の鮮度を見直す前提で運用することをおすすめします。

よくある質問
Q. 市場調査・競合調査におすすめのAIはありますか? A. 用途によって向き不向きがあります。ウェブ検索を伴う一次情報探索にはブラウジング機能を持つAI(ChatGPTの検索機能やPerplexityなど)、資料の要約・構造化にはClaudeやChatGPTのような汎用LLMが向いています。加えて、以前の記事「マーケターが"最低限"押さえておくべき競合調査方法」で紹介したAhrefsやSimilarWebのような専門ツールと組み合わせることで、AIだけでは拾いきれない定量データを補えます。特定のツールを断定的に「これが一番」とおすすめすることは避け、自社の調査目的に合わせて試すことをおすすめします。
Q. ChatGPTで市場調査はできますか? A. できます。ただし本記事の2章・3章で触れた通り、ChatGPTの回答をそのまま鵜呑みにせず、数値や固有名詞は元の一次情報で必ず確認してください。
Q. ChatGPT・Claude・Gemini以外に市場調査で使えるAIツールはありますか? A. あります。2章で触れた通り、出典付きの検索に特化したPerplexity、自分が用意した資料だけを根拠に回答するNotebookLM(Gemini Notebook)、学術論文に絞って検索できるConsensusなど、用途に応じた専門ツールがあります。どれが一番優れているかを断定することはせず、調べたい内容に応じて使い分けることをおすすめします。
Q. BtoBとBtoCで市場調査AIの使い方に違いはありますか? A. 5章で触れた通り、BtoBは業界レポートやIR資料の要約にAIを使う場面が多く、BtoCはSNS投稿やレビューの傾向分析にAIを使う場面が多くなります。どちらも、AIが出す傾向・要約を鵜呑みにせず、元の情報に戻って確認する姿勢は共通です。
Q. 一次情報と二次情報はどう見分ければいいですか? A. 3章の表の通り、一次情報は官公庁統計や企業のIR資料・プレスリリースなど、情報を最初に発信した当事者による資料です。二次情報はニュース記事やまとめサイトなど、一次情報を編集・要約したものを指します。AIの回答は基本的に二次情報にあたるため、重要な数値・主張は一次情報まで遡って確認してください。
Q. 無料の市場調査AIツールはありますか? A. ChatGPTやClaude、Perplexityには無料で使える範囲があります。ただし無料プランは利用回数や機能に制限があることが一般的で、具体的な条件は変わりやすいため、各サービスの公式サイトで最新の料金・利用条件を確認したうえでお使いください。
市場調査・競合分析にAIを取り入れることで、情報収集にかかる時間は当社の実感として以前より短くなっています。一方で、「何を調べるか」「集めた情報をどう解釈するか」という部分は、これまでと変わらず人の仕事です。AIに任せる部分と人が握る部分を分けて設計することが、リサーチの質を落とさずにスピードを上げる鍵になると当社では考えています。
自社のマーケティングリサーチにAIをどう組み込めばよいか、具体的に相談したい方はぜひ当社までお気軽にご相談ください。
参考・出典
- ChatGPT の deep research | OpenAI Help Center(2026年8月確認)
- Claude takes research to new places | Anthropic(2026年8月確認)
- Gemini アプリで Deep Research を利用する | Google Gemini アプリ ヘルプ(2026年8月確認)
- Perplexity | Getting started(2026年8月確認)
- Gemini Notebook(NotebookLM)公式サイト(2026年8月確認)
- Consensus: AI for Research 公式サイト(2026年8月確認)
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