コラム
レコメンドAIとは?仕組み・活用例・導入の考え方
レコメンドAIとは何かを定義し、協調フィルタリングなど仕組みを短く整理します。生成AIによる理由付き推薦・会話型接客への変化と、商品数・データ量・実装コストから自社への導入が必要か判断する基準をご紹介します。
公開日:2026年8月13日
執筆・編集:malna編集部(編集方針)

レコメンドAIとは、ユーザーの行動データ・購買データ・属性データをもとに、機械学習や生成AIを使って「この人に合いそうな商品・コンテンツ」を自動的に選び出し、提示する仕組みのことです。
ECサイトの「あなたへのおすすめ」欄、メディアの「次に読む記事」欄、SaaSプロダクトの「次に試すとよい機能」のサジェストは、多くの場合このレコメンドAIによって表示されています。以前から使われてきた仕組みですが、生成AI(大規模言語モデル、以下LLM)が広まったことで、レコメンドの中身そのものが変わり始めているというご相談を、当社もいただくようになりました。
本記事では、レコメンドAIの仕組みをできるだけ短く整理したうえで、生成AIの登場によってレコメンドがどう変わりつつあるのか、そして自社にレコメンドAIの導入が必要かどうかをどう判断すればいいのかという2点に絞ってご紹介します。アルゴリズムの数理的な解説や、レコメンドエンジン製品同士の比較は本記事の範囲外とします。また、広告配信の最適化については別のテーマになるため、広告運用のAI活用|自動化できる業務とできない業務で扱っています。
レコメンドAIの仕組み|協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリング
レコメンドAIの仕組みは、大きく2つの考え方の組み合わせで成り立っています。
- 協調フィルタリング:自分と似た行動をとった他のユーザーのデータをもとに推薦する方法です。「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」という表示は、この考え方に基づいています。ユーザーの数が多いほど精度が上がりやすい一方、行動データがまだ少ない新規ユーザー・新規商品には弱いという特徴があります。
- コンテンツベースフィルタリング:商品・コンテンツそのものの属性(カテゴリ・価格帯・素材・文章の内容など)をもとに、似たものを推薦する方法です。「このジャンルが好きなら、こちらも合うはず」という考え方で、行動データが少ない段階でも属性情報があれば推薦を出せます。
実際のサービスの多くは、どちらか一方だけを使うのではなく、両者を組み合わせたハイブリッド方式を採用しています。加えて、直近の閲覧・検索といったリアルタイムの行動をその場で反映させる仕組みを持つサービスも増えています。ここから先の数式・モデル構造といった技術的な詳細は専門的になりすぎるため、本記事では扱いません。より深い技術解説が必要な方は、機械学習分野の専門資料をご確認ください。

LLM時代のレコメンド|「なぜおすすめなのか」を説明できるようになった
従来型のレコメンドAIには、いくつかの弱点があると当社は感じています。
- 推薦の理由を説明できない:「なぜこの商品がおすすめなのか」を、数値的な類似度スコア以上の言葉で説明することが難しく、ユーザーからは「なんとなく出てきた」という体感になりやすい
- コールドスタート問題:新規ユーザーや新しく追加した商品・コンテンツは行動データが蓄積されておらず、精度の高い推薦が難しい
- 一覧を見るだけの一方通行:ユーザーが自分の要望を自然な言葉で伝える手段がなく、あらかじめ用意された「おすすめ欄」を眺めるだけになりやすい
生成AIの登場によって変わり始めているのは、主にこの3点だと当社は考えています。
理由付き推薦:生成AIは、行動データや商品の属性情報をもとに「〇〇をお探しの方によく選ばれています」「以前ご覧になった△△と近い雰囲気の商品です」といった、推薦の理由を自然な文章で提示できます。理由が示されることで、ユーザー側の「なぜこれが出てきたのか分からない」という体感が減りやすくなると当社は考えています。
会話型接客(Web接客AI):チャット形式で「予算はこれくらいで、こういう用途で使いたい」といった要望を伝えると、その場で条件に合う商品・コンテンツを絞り込んで提示する形式です。サイト上に常駐するチャット型のAIが接客を担う「Web接客AI」と呼ばれる仕組みも、この会話型レコメンドの一形態にあたります。あらかじめ用意された「おすすめ欄」を眺めるだけでなく、ユーザー側から要望を伝えて絞り込んでいく双方向のやり取りが可能になった点が、従来型との大きな違いです。
コールドスタートの補助:生成AIは、商品説明文やレビューといったテキスト情報から特徴を読み取ることができるため、行動データがまだ十分に蓄積されていない新商品・新規ユーザーに対しても、属性情報をもとにした初期の推薦をある程度補えます。行動データが積み重なるまでの「立ち上げ期」の精度を上げやすくなった、というのが当社の理解です。
従来型とLLM時代のレコメンドの違いを整理すると、次のようになります。
| 観点 | 従来型(協調フィルタリング等) | LLM時代(生成AI活用) |
|---|---|---|
| 推薦の根拠 | 類似度スコアが中心で、理由は明示されないことが多い | 自然な文章で推薦理由を提示できる |
| ユーザーとの関係 | 用意された「おすすめ欄」を見るだけの一方通行 | チャットで要望を伝え、絞り込んでもらう双方向のやり取りも可能 |
| 新規商品・新規ユーザーへの対応 | 行動データが蓄積されるまで精度が上がりにくい | 商品説明文・属性情報から特徴を読み取り、初期の精度を補いやすい |
| 主な実装形態 | レコメンドウィジェット(「あなたへのおすすめ」欄など) | ウィジェットに加え、Web接客AI・チャット型の会話接客・検索窓での自然文対応も選択肢に入る |
ただし、生成AIが提示する「理由」が、実際のデータに基づいた根拠なのか、それらしく作文された説明なのかは、導入する側が見極める必要があります。生成AIは自然な文章を作ることには長けていますが、その文章が正しいデータの裏付けを持っているかどうかは別の話です。理由付けの根拠が実際の行動データ・属性データに接続されているかどうかを、導入時に確認しておくことをお勧めします。
レコメンドAIの活用例|EC・メディア・SaaSで異なる使われ方
レコメンドAIの使われ方は、業種・サービス形態によって重心が異なります。
- EC(ECサイト):商品一覧・商品詳細ページでの関連商品表示、カート内での「よく一緒に購入される商品」の提示、閲覧履歴に基づくトップページのパーソナライズなどが中心です。商品数が多く、購買・閲覧ログが積み重なりやすいため、レコメンドAIが最も定着している領域だと当社は捉えています。
- メディア(ニュース・コラムサイト等):記事末尾の「次に読む記事」欄、トップページでの記事の並び順のパーソナライズなどが中心です。1本あたりの単価が低い分、閲覧回数・滞在時間の積み重ねで効果を判断する傾向があります。
- SaaS(業務システム・アプリ):利用中の機能に応じて「次に試すとよい機能」をサジェストする、オンボーディング中のユーザーに次のステップを提示するといった使われ方が中心です。ECやメディアと違い、対象となる「商品」に相当する機能の数自体が限られるケースが多く、次章で扱う判断基準に関わってきます。
いずれの業種でも、レコメンドAIは「表示すれば終わり」ではなく、表示後のクリック率・遷移率を確認しながら調整を続ける運用が前提になります。なお、業種ごとの具体的な導入効果(コンバージョン率の向上幅など)については、公表されている調査・事例のうち出典を明示できるものに限って参照するべきだと当社は考えています。一般化された「〇〇%改善」という数字は、業種・商品特性・実装方法によって前提が大きく異なるため、そのまま自社に当てはめるのは避けたほうが安全です。

自社にレコメンドAIが必要か判断する3つの基準
レコメンドAIは、どの企業にも一律で効果が出る仕組みではないと当社は考えています。導入を検討する際は、次の3つの観点で自社の状況を確認することをお勧めします。
| 観点 | 導入を検討しやすい状況 | 後回しでよい・効果が出にくい状況 |
|---|---|---|
| 商品・コンテンツ数 | 数百点以上あり、ユーザーが一覧を見ただけでは選びきれない規模 | 数十点程度で、一覧表示だけでも十分に選べる規模 |
| データの蓄積量 | 一定期間分の購買・閲覧・利用ログが積み重なっている | サービス開始直後で行動ログがほとんど蓄積されていない(前述のコールドスタート状態) |
| 実装コスト | 既存のECカート・CMS・SaaS基盤に標準搭載の機能、またはAPI連携で対応できる | フルスクラッチでの機械学習基盤構築が前提になる規模 |
3つの観点のうち、当社が特に見落とされやすいと感じているのは実装コストです。「レコメンド機能を入れたい」というご相談を受けたとき、実際に確認してみると、契約中のECカート・CMSに標準機能としてすでに搭載されていて、設定を有効にするだけで済むケースが少なくありません。新たに機械学習の基盤を構築する前に、まず今契約しているツールの機能を確認することをお勧めします。
3つとも当てはまらない場合、いきなり高度なレコメンドAIを導入するのではなく、「人気順」「新着順」「カテゴリ別の手動ピックアップ」といったシンプルな仕組みで十分に機能することが多い、というのが当社の実感です。データが積み重なり、商品・コンテンツ数が増えてきた段階で、レコメンドAIへの移行を検討するという順序が現実的だと考えています。
導入を検討する際の進め方
レコメンドAIの導入を検討する場合、当社は次の順序をお勧めしています。
- 現状の「おすすめ」表示の課題を洗い出す:すでに何らかのおすすめ表示がある場合、クリック率・遷移率のデータを確認し、「表示されているが使われていない」のか「そもそも精度が低い」のかを切り分けます。
- データの蓄積状況を確認する:購買・閲覧ログ、商品・コンテンツの属性データがどの程度、どんな形式で蓄積されているかを確認します。ここが薄いままでは、どの仕組みを選んでも精度は上がりません。
- 既存の基盤にある機能をまず使う:多くのECカート・CMS・SaaS基盤には、標準機能としてレコメンド機能が搭載されています。フルスクラッチで構築する前に、既存機能で十分かどうかを確認します。
- 狭い範囲で検証してから広げる:特定のカテゴリ・特定の導線に限定して試験導入し、効果を確認したうえで対象範囲を広げます。
- 理由付け・会話型接客の追加を検討する:基本的なレコメンドが機能してから、生成AIによる理由付け表示や会話型の接客機能の追加を検討します。順序を逆にすると、土台のデータが整っていないまま高度な機能を載せることになり、精度が上がりにくくなります。
なお、ユーザーの購買・閲覧履歴には個人を特定できる情報が紐づいていることがあります。生成AIサービスに行動データを読み込ませる際は、氏名・連絡先といった識別情報を含めず、属性・行動データのみで扱うなど、個人情報の取り扱いに配慮した設計にすることをお勧めします。
よくある質問
Q1. レコメンドAIとは何ですか。 A. ユーザーの行動データ・購買データ・属性データをもとに、機械学習や生成AIを使って「この人に合いそうな商品・コンテンツ」を自動的に選び出し、提示する仕組みです。ECサイトの「おすすめ」欄やメディアの「次に読む記事」欄などが代表的な例です。
Q2. レコメンドエンジンとレコメンドAIは同じものですか。 A. レコメンドエンジンは、レコメンドAIの推薦処理を実際に行うシステム・ソフトウェアの部分を指す言葉として使われることが多いです。「レコメンドAI」という言葉が仕組み全体・概念を指すのに対し、「レコメンドエンジン」はその中核となる技術要素を指す、という使い分けだと当社は理解しています。
Q3. AIのレコメンド機能を導入するにはどんなデータが必要ですか。 A. 最低限、商品・コンテンツの一覧データと、ユーザーの購買・閲覧・利用ログが必要です。データが少ない立ち上げ期は、前述のとおり商品説明文などの属性情報を活用することで精度を補える場合がありますが、行動データが積み重なるほど精度は上がりやすくなります。
Q4. AIによるレコメンドの活用事例を教えてください。 A. EC・メディア・SaaSでの代表的な使われ方は本記事の3章でご紹介したとおりです。具体的な導入効果の数値は、業種・商品特性・実装方法によって前提が大きく異なるため、出典を明示できる公表事例に限って確認し、自社の状況にそのまま当てはめないことをお勧めします。
Q5. 生成AIによるレコメンドは、どんな場面で特に効果的ですか。 A. 新商品・新規ユーザーが多く、行動データがまだ蓄積されていない場面や、ユーザーに「なぜおすすめなのか」を説明したい場面で効果を発揮しやすいと当社は考えています。一方で、商品数が少なく一覧で選べる規模であれば、シンプルな仕組みで十分なケースも多くあります。
さいごに
レコメンドAIは、協調フィルタリングやコンテンツベースフィルタリングといった仕組みの上に、生成AIによる理由付き推薦や会話型接客が加わり、選択肢が広がってきている段階だと当社は考えています。ただし、どの企業にも一律で導入すべき仕組みではなく、商品・コンテンツ数、データの蓄積量、実装コストという3つの基準に照らして、自社に必要かどうかを見極めることが大切です。
レコメンドAIの導入検討や、既存のおすすめ機能の精度改善についてお困りの方は、ぜひ当社までお気軽にご相談ください。
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