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コラム

AI導入補助金・IT導入補助金の不正と詐欺|「実質無料」「代行丸投げ」は犯罪

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の事務局は、実質無償の販売、申請の代理、未導入の申請などを「すべて不正であり、犯罪」と公表しています。怪しい勧誘の見分け方、措置の内容、気づいた後の返還手続きを公式の記述から整理します。

公開日:2026年7月29日更新日:2026年9月30日

執筆・編集:malna編集部(編集方針)

「補助金を使えば実質無料でAIツールを導入できます」という営業を受けたとき、それが不正にあたるかどうかを判断できるでしょうか。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の事務局は、公式サイトで「キャッシュバック」「実質無料」などの勧誘は不正行為の可能性があると警告し、不正にあたる行為を挙げて「すべて不正であり、犯罪です」と公表しています。 本記事では、その公式の記述をもとに、事業者が意図せず不正に巻き込まれないための判断材料を整理します。

本記事は2026年9月30日時点の公式サイトの記述に基づいています。制度・運用は変更されるため、申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

事務局は「不正であり犯罪」と明言している

公式サイトの「不正行為にご注意ください」のページには、次の記述があります。

以下の行為はすべて不正であり、犯罪です。不正行為と判断した場合、交付決定取消、補助金の返還請求、IT導入支援事業者登録取消を行います。

(出典: 中小企業基盤整備機構「不正行為にご注意ください」2026年9月30日確認 https://it-shien.smrj.go.jp/antifraud/ )

ページの冒頭には、「キャッシュバック」「実質“無料”」などは不正行為の可能性があるとも掲げられています。制度側が能動的に警告を出している領域だと理解しておく必要があります。

不正にあたる5つの行為

公式ページが列挙している内容です。

#不正にあたる行為公式が挙げる具体例
1ITツールを実質無償で提供する、減額する等の販売行為会計ソフトの購入費用を後日、IT導入支援事業者や第三者から返金される/営業先への紹介料と称して「紹介料やコンサル料等」を受け取る
2補助対象者以外が申請手続きを代理で行う行為補助対象者がGビズIDを他者に共有し、申請マイページの開設や交付申請の手続きを行わせる
3ITツールが導入されていない、役務(導入研修・コンサルティング等)が実際に遂行されていない行為試供版のみが提供され利用可能なソフトウェアが導入されていない/10時間の導入研修を受講したことにして受給したが、実際は導入手順をメールで共有されただけ
4同じ内容で国から他の補助金や助成金を受給する行為1つの顧客管理システムについて、本補助金とものづくり補助金の両方で受給する
5補助事業者として不適切な行為受給要件を満たすため、従業員を過少申告するなど企業実態を偽装して申請する

(出典: 同上)

実務でいちばん誤解されやすいのは2番

2番の「代理申請」は、悪意がなくても該当しうる項目です。

公式の例は、GビズIDなどを他者に共有し、申請マイページの開設や交付申請の手続きを行わせるというものです。公募要領も、申請マイページのログインIDとパスワードは責任をもって管理し、IT導入支援事業者を含む第三者に渡さないことを申請要件に挙げています。つまり、申請作業を支援業者や代行業者に任せきりにして、IDを渡して手続きを代わりにやってもらうと、これに該当します。

「忙しいので全部やってもらった」という状態は、制度上は不正として扱われる構造になっています。支援業者に相談すること自体が問題なのではなく、本人が行うべき手続きを本人以外が行うことが問題です。

なお、申請代行費そのものも補助対象外経費として公募要領に明記されています(出典: 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領」2026年8月28日更新 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf )。

1番は「実質無料」の営業がそのまま該当する

公募要領は、自己負担額を減額または無償とするような販売方法を、補助事業者に実質的に還元を行うもの(キャッシュバックを含む)として不正の対象にしています。具体例として、次の3つが挙げられています。

  • ポイント・クーポン等(現金に交換可能なものを含む)の発行・利用でITツールの購入額を減額・無償とし、証憑に記載の金額と実質的に支払われた金額が一致しないもの
  • ITツールの購入額の全部または一部に相当する金額を、口座振込や現金で申請者へ払い戻すことで、証憑の金額と実際の支払額が一致しないもの
  • IT導入支援事業者や補助事業と直接関係のない第三者から資金提供を受け、紹介料やコンサル料等の名目でその資金を還流させるもの。紹介等の実態を伴っていたとしても、実質的な還元は該当するとされています

(出典: 同公募要領「補足5」)

「補助金を使えば自己負担ゼロで導入できます」という提案は、この構造に該当する可能性があります。 通常枠の補助率は1/2以内(一定の賃金条件を満たす場合は2/3以内)で、制度上、自己負担は必ず発生します。それがゼロになるという説明が成り立つとすれば、証憑と実際の支払額が一致しない仕組みが入っていることになります。

判断の目安として、証憑に書かれた金額と、実際に自社の口座から出ていく金額が一致しているかを確認してください。ここがずれる提案は、内容を問わず慎重に扱う必要があります。

立入調査と措置の内容

事務局は調査を実施しています。

事務局では、本補助金の交付規程の定めに則り、IT導入支援事業者、補助事業者に対し、現地確認を含めた立入調査を行っております。

交付規程や公募要領に反する事実が確認された場合、または立入調査に正当な理由なく応じなかった場合は、次の措置が取られることがあるとされています。

  • IT導入支援事業者の登録取消
  • 補助事業者の交付決定の取消
  • 事業者名の公表
  • 警察への通報

(出典: 中小企業基盤整備機構「不正行為にご注意ください」)

公募要領では、この立入調査は予告なく行われる場合があり、対象となった場合は交付決定や補助金の交付が留保されることもあると記載されています。事業者名の公表と警察への通報が明記されている点は重く受け取るべきです。金銭的な返還だけで終わらない可能性があります。

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登録取消になったIT導入支援事業者は一覧が公表されている

事務局は、登録を取り消したIT導入支援事業者を、法人番号・代表者氏名・所在地・登録年度とともにPDFで公表しています。掲載ファイルには2026年9月10日更新と記載があり、6月30日公表分と9月10日公表分が並んでいます(出典: 中小企業基盤整備機構「IT導入支援事業者の登録取消について」 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/deregistration_list.pdf )。

取消の理由は、事務局による補助事業の実施状況の確認で、虚偽や不正その他不適切な行為が行われているとの疑義が生じ、審議のうえ不適当と判断されたためと説明されています。提案を受けたIT導入支援事業者の法人番号で、この一覧に載っていないかを確認するのが、最も手軽な予防策です。なお、一覧に載っていないことは、その事業者が適切であることの保証にはなりません。

気づいた後でも返還を受け付けている

公式ページには、不正に関与してしまった場合、補助金の自主的な返還を受け付けると書かれています。手続きは、不正であることを知っていたかどうかで分かれます。

状況提出する書類返還にあたって
不正であることを知りながら関与した自己申告書加算金を課したうえで返還・納付
不正であることを知らずに関与した誓約書指定の返還口座へ、事務局が定めた金額を返還

(出典: 同上「補助金の返還について」)

どちらも、書類を事務局が指定するWEBフォルダへアップロードして提出し、事務局の確認後にメールで届く返還口座へ期日までに入金する流れです。提出後は内容を変更できないこと、納付額は補助事業者ごとに全額を一括で入金する必要があること、書類の準備に時間がかかるため納付予定日の2〜3週間前までに不備のない書類を出すことが注意事項として示されています。

すでに受け取ってしまった場合の出口が用意されているということです。気づいた時点で放置するより、事務局に相談するほうが選択肢が残ります。

情報提供の窓口も開設されている

事務局は、不正に関する情報提供の窓口を設けています。提供された個人情報は追加のヒアリングなど連絡手段としてのみ利用し、個人情報と不正に関する情報を第三者へ提供することはないと明記されています(出典: 同上「不正に関する情報提供について」)。

不審な提案を受けた側からも通報できる経路があるということです。

発注側が確認すべきこと

支援業者・ベンダーからの提案を受ける際、次の点を確認しておくと判断しやすくなります。

確認事項なぜ確認するか
申請マイページの開設と申請手続きを自社で行う前提になっているか。GビズIDを渡すよう求められていないか本人以外が行うと代理申請に該当する
証憑の金額と実際の支払額が一致するか。返金・ポイント・紹介料の話が出ていないか一致しない仕組みは実質無償の販売に該当しうる
自己負担が発生する前提になっているか補助率は1/2以内(または2/3以内)など。ゼロにはならない
提案されたITツールが事務局に登録済みか。IT導入支援事業者が登録取消の一覧に載っていないか登録されていないツールは補助対象外
契約・発注を交付決定後に行う手順になっているか交付決定前に購入したITツールは補助対象外
導入研修やコンサルティングが契約どおりに実施される内容になっているか役務が実際に遂行されていないことは不正にあたる
同じ内容で他の補助金を申請していないか国からの重複受給は不正にあたる

まとめ

デジタル化・AI導入補助金では、不正にあたる行為が公式に明示され、事務局が「犯罪です」と公表しています。措置には事業者名の公表と警察への通報が含まれ、登録取消となったIT導入支援事業者は一覧でも公表されています。

実務で誤解されやすいのは、申請手続きを支援業者に任せきりにすると代理申請に該当することと、「実質無料」の提案は証憑と実支払額の不一致という不正の構造そのものであることです。どちらも、事業者側に悪意がなくても該当しうる形になっています。

相談すること自体は問題ではなく、本人が行うべき手続きを本人が行うかどうかが分かれ目です。判断に迷う提案を受けた場合は、事務局の相談窓口や公的機関に確認するのが確実です。

補助金を使うかどうかを含めて、どの業務からAIを入れるべきかの整理から相談したい場合は、企業からのご相談もご検討ください。オンラインでの打ち合わせを基本としつつ、必要に応じて訪問しての対応も可能です。無料で使える公的窓口は都道府県別のページにまとめています。

なお本記事は公式サイトの記述を整理したものであり、個別の行為が不正に該当するかの判断は、事務局および必要に応じて弁護士等の専門家にご確認ください。

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