AIタレント名鑑

コラム

製造業でAI人材をどう活かすか:工程ごとに違うデジタル化の実態から考える切り分け方

生産管理・品質記録・図面・作業手順書といった製造固有の業務を対象に、AI活用人材へ任せられる範囲と現場判断が必要な領域の線引きを、ものづくり白書とJILPT調査の実数値をもとに整理します。

公開日:2026年7月26日

執筆・編集:malna編集部(編集方針

製造業でAI人材をどう活かすか:工程ごとに違うデジタル化の実態から考える切り分け方

結論:デジタル化が届いていない工程と、紙に残る記録から着手する

製造業のAI活用は「工場の無人化」から語られがちですが、実務で先に効くのは生産管理・品質記録・図面・作業手順書といった、情報を書く・探す・引き継ぐ工程です。独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が製造業3,313社から回答を得た調査では、デジタル技術を活用した業務改善に取り組んでいる工程は「事務処理」43.9%、「生産管理」43.7%が上位で、「品質管理」22.2%、「企画・開発・設計」20.4%はその半分程度にとどまります(出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.267 ものづくり産業におけるDXと人材育成に関する調査」https://www.jil.go.jp/institute/research/2026/267.html)。どこから着手すべきかは、この工程ごとの差にそのまま表れています。本稿では、製造業でAI活用人材に任せられる業務と、現場判断として人が担い続けるべき領域の線引きを整理します。

工程ごとにデジタル化の進み方が2倍近く違う

まず押さえておきたいのは、製造業のデジタル化が「会社単位」ではなく「工程単位」で進んでいるという事実です。前掲のJILPT調査(従業員30人以上の製造業2万社を対象に2024年11月27日から12月23日に実施、有効回収3,313社・回収率16.6%)では、工程別の実施状況は次のようになっています。

工程デジタル技術を活用した業務改善を行った・行っている企業の割合
事務処理43.9%
生産管理43.7%
製造39.9%
受注・発注・在庫の管理35.2%
品質管理22.2%
企画・開発・設計20.4%
行っていない22.0%

(複数回答。出典:同上 https://www.jil.go.jp/institute/research/2026/267.html)

何らかの取り組みをしている企業は全体で77.2%に達している一方、品質管理と企画・開発・設計は事務処理の半分程度です。多くの製造業では、受発注や経理まわりは一定デジタル化された反面、品質記録や図面・仕様検討といった技術寄りの工程に手が届いていない状態が残っています。AI活用人材を迎えるときに最初に見るべきは、この「届いていない工程」です。

さらに同調査は、各工程での取り組みの深さも示しています。いずれの工程でも「見える化(データの収集・蓄積・分析)」は7割台から8割台に達しているのに対し、「自動化(データによる制御)」は「製造」で49.5%、「最適化(自動化を踏まえた工程全体の見直し)」は「製造」「生産管理」で3社に1社程度、「企画・開発・設計」「品質管理」では4社に1社程度です。データは取れているが、そのデータを使って工程を組み替えるところまでは進んでいない、という構図が読み取れます。AI活用人材の役割は、この「見える化の先」を設計する部分に置くと重なりが少なくなります。

人材確保が社内偏重になっている実態

もう一つの特徴は、製造業がデジタル化の担い手を社内でまかなおうとしている点です。2025年版ものづくり白書は、デジタル技術の導入に際して約6割の企業が社内人材の活用・育成により人材確保を行い、約2.5割は新たな人材確保を行わず導入部署の既存人材のみで対応していると整理しています(出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2025年版ものづくり白書(概要)」https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2025/pdf/gaiyo.pdf)。JILPT調査でも、人材確保の方法はいずれの工程でも「社内人材の活用・育成」が半数を超えて最多で、「新たに採用(新卒・中途)」は「企画・開発・設計」の22.9%が他工程より10ポイント程度高い水準です。

既存の現場担当者が本業と兼務でデジタル化を担う形は、現場の実情を理解している強みがある一方、稼働の確保が難しく、進行が担当者の余力に左右されます。週1日程度の業務委託でAI活用人材を組み合わせる考え方は、この兼務の負荷を外に出す手段として位置づけられます。稼働イメージの具体像は週1日のAI人材活用で何が変わるかで整理しています。

任せられる周辺業務と、現場判断が必要な領域

製造業の業務をAI活用人材への適性で分けると、次のように整理できます。実際の線引きは製品特性や工程の自動化度合いによって変わるため、整理の一例として捉えてください。

業務AI活用適性位置づけの考え方
生産実績・日報・稼働記録の集計と可視化紙・Excelに散っている記録を集約する工程。定型性が高い
品質記録・不良履歴の整理と傾向の抽出記録の整理・要約まで。是正措置の決定は品質保証部門が担う
図面・仕様書・過去案件の検索性向上探す時間の削減に直結。図面そのものの妥当性判断は設計者が行う
作業手順書・教育資料の下書き作成ベテランの説明を初稿に落とす工程。現場確認を経て確定する
見積・受注対応の一次計算とたたき台作成過去実績からの概算まで。価格の最終決定は営業・経営が担う
設備の異常検知・予兆保全のデータ整備データ収集と前処理は任せやすい。しきい値設定は保全部門と共同で行う
検査・測定の合否判定出荷可否に直結する判断。人による最終確認を残す
製造条件・加工条件の変更判断品質・安全に直結する現場判断。技術者が責任を負う
安全管理・危険予知に関わる判断労働安全衛生に関わる領域。AIや外部人材に委ねない
取引先との仕様調整・納期交渉関係性と責任を伴う対人業務

線引きの基準は「その判断を誤ったときに、品質・安全・納期のどこに影響が出るか」です。記録の集計や資料の下書きは間違いに気づける工程ですが、検査の合否や加工条件の変更は気づく前に製品として出て行ってしまいます。この違いを最初に明文化しておくと、現場からの警戒感も抑えやすくなります。現場に定着させる進め方は現場でAIを定着させるための実務対応で扱っています。

ここまでの内容を、自社の依頼として整理してみませんか

課題が固まっていない段階でも、実務でAIを使える人材への依頼内容を一緒に整理できます。

費用感と進め方を相談する

多品種少量と量産で、任せ方は変わる

同じ製造業でも、生産形態によって効きやすい領域は異なります。

生産形態積み上がりやすい負荷AI活用人材に任せやすい工程
多品種少量・個別受注品番ごとの図面・仕様・見積の作り直し、段取り替えの記録過去案件の検索性向上、見積のたたき台作成、手順書の派生版づくり
量産・繰り返し生産同一項目の記録入力、不良の再発分析、設備データの整理記録の自動集計、不良傾向の整理、設備データの前処理

2025年版ものづくり白書も、労働力不足のなかで生産性や産業競争力を向上させるにはロボット・AIの開発・活用の推進が重要であり、少量多品種生産をはじめとした高度かつ多様なニーズへの対応が課題だと述べています。多品種少量では「毎回ゼロから作り直している資料」が、量産では「毎回同じ内容を手で入力している記録」が、それぞれ最初の切り出し候補になると考えられます。

現場のIT習熟度のばらつきと、紙・Excelが残る前提

製造業でAI活用を進める際に避けて通れないのが、現場のIT習熟度の差です。2025年版中小企業白書は、デジタル化の取組段階を尋ねた調査で「紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態」(段階1)と回答した事業者の割合が前年調査より大きく減少した一方、デジタル化に取り組めていない中小企業・小規模事業者も一定数存在すると整理しています。同白書はまた、DXに向けた取り組みを進めるうえでの問題点として、いずれの取組段階でも「費用の負担が大きい」「DXを推進する人材が足りない」の回答割合が高いことを示しています(出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第1部第1章第5節 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b1_1_5.html)。

生成AIの側でも同様の壁が確認されています。総務省の令和7年版情報通信白書によると、生成AI導入に際しての懸念事項として日本で最も多いのは「効果的な活用方法がわからない」で、次いで「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」が挙げられています。生成AIの活用方針を定めている日本企業の比率は2024年度調査で49.7%(2023年度調査は42.7%)で、中小企業では「方針を明確に定めていない」との回答が約半数を占めます(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112220.html)。図面や製造条件といった技術情報を抱える製造業では、この2つの懸念が重なりやすく、扱える情報の範囲と保管方法を先に決めておく必要があります。

したがって現場に「まずツールを使ってもらう」形から入るのは順序が逆になりやすいと考えられます。紙・Excel運用が残っている前提のまま、記録の集約や過去資料の検索といった、現場の作業手順を変えずに済む工程から始めるほうが摩擦が小さい進め方です。

技能伝承をAIで支えるという着眼点

製造業固有の課題として、ベテランの技能をどう次世代に引き継ぐかがあります。2025年版ものづくり白書は、工作機械向けの溶接部品製造を行う企業が、ベテラン職人から若手職人への育成時間を確保できないという課題に対し、現場の意見を聞きながら自社でデジタル化を進め、ベテラン職人の製作ノウハウを蓄積・継承する通称「トラの巻」を作成した事例を紹介しています。また2025年版中小企業白書は、精密板金加工を手掛ける企業が生産管理ソフトを全面導入し、受注ごとの生産工程や図面をリアルタイムで確認できるようにした結果、進捗確認のために現場を見に行く動きや図面を探す動きが減ったと報告しています。

いずれも、技能そのものをAIに置き換えたのではなく、技能を記録・共有できる形に整える工程をデジタル化した事例です。AI活用人材に期待できるのも同じ範囲で、ベテランの説明を手順書や教育資料の初稿に落とす、過去の不良事例を検索できる形に整える、といった支援が中心になります。何を残すべき技能とみなすかの判断自体は、現場の技術者が担う領域です。

なお、社内に推進できる人がいない状態からの立ち上げ方は社内にAI人材がいない中小企業の進め方でも整理しています。

まとめ

製造業でAI活用人材を活かす際の出発点は、工程ごとにデジタル化の進み方が大きく違うという事実を前提に置くことです。品質記録や図面・仕様検討といった相対的に手つかずの工程、そして紙やExcelに残っている記録の集約は、現場の作業手順を大きく変えずに任せやすい領域です。一方で検査の合否判定、製造条件の変更、安全管理に関わる判断は、品質・安全に直結する現場判断としてAIや外部人材に委ねず、技術者が責任を負う形を維持する必要があります。多品種少量なら資料の作り直し、量産なら記録の入力といった形で、自社にとっての反復作業を1つ特定し、そこから始める進め方が現実的です。労働安全衛生法や製品安全に関わる判断については、必ず社内の有資格者・専門家に確認したうえで運用してください。

AI活用人材への依頼を相談する

課題整理の段階から、実務でAIを使える人材の活用方法を相談できます。

  • 相談した時点で契約は発生しません。
  • ご紹介にあたっての手数料は利用規約 第11条に記載しています。
  • ご紹介は、書類と面談で実務のAI活用経験を確認した人材に限られます。