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コラム

マーケティングDXとは?AI時代の定義と進め方

マーケティングDXの定義とデジタルマーケティングとの違いを整理し、なぜツール導入で止まるのか、データ整備・業務プロセス・組織能力の3段階の進め方をmalnaの実践を交えて解説します。

公開日:2026年8月9日

執筆・編集:malna編集部(編集方針

マーケティングDXとは?AI時代の定義と進め方

「マーケティングDX」という言葉を掲げてMAツールやCDP(顧客データ基盤)を導入したものの、業務のやり方自体は以前とあまり変わっていない、というご相談を受けることが当社では珍しくありません。ツールを入れることがゴールになってしまい、肝心のデータ活用や業務プロセスの見直しまで進んでいないというお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。

本記事では、マーケティング支援とAI導入支援を手がける当社の立場から、マーケティングDXの定義を整理したうえで、なぜ「ツール導入」で止まってしまう企業が多いのか、実務としてどう進めればよいのかについてご紹介します。生成AIが普及した今のタイミングでこのテーマを扱う理由と、AI活用そのものの具体的なテクニックについては範囲を分けていますので、業務別の活用方法を知りたい方は末尾でご紹介する記事もあわせてご参照ください。

マーケティングDXとは

マーケティングDXとは、データとデジタル技術を活用してマーケティング活動の業務プロセス・組織体制・顧客への向き合い方を変革し、競争上の優位性を築いていく取り組みのことだと当社は理解しています。

「マーケティングDX」という言葉そのものを経済産業省が定義しているわけではありません。ベースにあるのは、経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」や「デジタルガバナンス・コード」の中で示している、より広い意味でのDXの考え方です。経済産業省は、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品・サービス・ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織・プロセス・企業文化を変革して競争上の優位性を確立することをDXと位置づけています(経済産業省「デジタルガバナンス・コード」、2026年8月時点)。当社の理解では、マーケティングDXはこの考え方をマーケティング領域に当てはめたものです。

ポイントは、デジタル技術そのものが目的ではなく、あくまで変革のための手段だという点です。MAツールやCDPを導入することは、マーケティングDXの一部ではありますが、それ自体がゴールではありません。

なぜ今、この考え方がマーケティング領域で改めて重視されているのか。当社の見立てでは理由は大きく2つあります。1つは、顧客が企業と接する接点(Web・広告・SNS・店舗・カスタマーサポートなど)が増え続け、担当者の経験と勘だけではすべての接点の状態を把握しきれなくなっていることです。もう1つは、データが整備されていない状態では生成AIに任せられる業務の範囲も広がらないという、後述する構造的な制約です。マーケティングDXが目指す先にあるのは、最終的には顧客体験(CX)の向上だと当社は考えています。データを整備し業務プロセスを見直すこと自体が目的ではなく、顧客への向き合い方を変えるための土台づくりだと捉えるのが実務的です。

デジタルマーケティングとの違い

マーケティングDXとよく混同される言葉に「デジタルマーケティング」があります。当社の理解では、この2つは扱う範囲が異なります。

デジタルマーケティングは、Web広告の運用やSNS運用、SEOといった個別の施策・手法を指す言葉です。一方でマーケティングDXは、そうした個別施策を支える業務プロセスや組織体制、意思決定の仕方そのものを変革する取り組みを指します。両者の違いを整理すると、次のようになります。

観点デジタルマーケティングマーケティングDX
対象個別の施策・手法(広告運用、SNS運用、SEOなど)施策を支える業務プロセス・組織体制・意思決定の仕方
目的各施策の成果(CV数、CPAなど)の最大化業務のやり方そのものの変革、競争優位性の確立
主体施策の実行担当者経営層を含む組織全体
変化の起点ツール・広告媒体・クリエイティブの改善データ整備・業務プロセスの見直し・組織能力の構築
マーケティングDXの構成要素を示した図
マーケティングDXの構成要素を示した図

例えば、Web広告の運用を担当者の経験と勘に頼って行っている状態から、データに基づいて予算配分を判断する仕組みに変える。これは施策そのもの(デジタルマーケティング)というより、その施策をどう回すかという業務プロセス(マーケティングDX)の話です。デジタルマーケティングの個別施策だけを積み重ねても、業務プロセスや組織の意思決定の仕方が変わらなければ、マーケティングDXが進んだとは言えないというのが当社の考えです。

なぜ「ツール導入」で止まってしまうのか

マーケティングDXが「ツール導入」で止まってしまう最大の原因は、データが整備されないまま複数のツールを個別に導入してしまうことだと当社は考えています。

広告媒体ごとの管理画面、MAツール、CRM(顧客関係管理)、Webサイトのアクセス解析ツールが、それぞれ別々のデータを持ったまま連携されていない状態は珍しくありません。この状態では、ツールを増やすほど「どの数字を見ればよいか分からない」状況が悪化してしまいます。

もう一つの原因は、ツール導入の意思決定と、現場の業務プロセスの見直しが別々に進んでしまうことです。経営層や情報システム部門がツールの選定・契約を主導し、実際に使うマーケティング現場の業務フローの見直しが後回しになるケースを、当社は支援の中で目にしてきました。ツールを導入する前に、そのツールを使ってどの業務プロセスをどう変えるのかを先に決めておく必要があるのではないでしょうか。

さらに、導入時点で「何が変わったら成功と言えるのか」という判断基準を決めずに進めてしまうケースも少なくありません。既存のKPI(重要業績評価指標)をそのまま流用するだけで、ツール導入によって短縮したい業務時間や、精度を上げたい判断の種類を具体的に定義していないと、導入後に「使われているのか、成果が出ているのか」を誰も検証できない状態に陥ります。判断基準を先に言語化しておくことは、次章で扱う3段階のうち特に2段階目(業務プロセスの見直し)の前提になります。

マーケティングDXの進め方|3つの段階

マーケティングDXを進める際、当社は次の3段階で考えることをお勧めしています。

  1. データ整備:広告・Webサイト・CRMなど、部門やツールごとに分散しているデータを、どこで一元的に見られる状態にするかを決めます。すべてを一つのツールに統合する必要はありませんが、少なくとも「どのデータをどこで確認すればよいか」を関係者が共通認識として持てる状態を目指します。
  2. 業務プロセスの見直し:データが整備できたら、そのデータをもとに何を判断し、誰が意思決定するのかという業務プロセスを見直します。担当者の経験と勘に頼っていた判断を、データに基づく判断に置き換えられる箇所から着手するのが現実的です。
  3. 組織能力の構築:業務プロセスが変わった状態を一時的なものに終わらせず、継続的に運用できる体制を作ります。データを見る習慣、判断の基準、担当者が異動しても回る仕組みを組織として持てるかどうかが、この段階の焦点です。
データ整備、業務プロセスの見直し、組織能力の構築という3段階が階段状に上っていく様子を示した図
データ整備、業務プロセスの見直し、組織能力の構築という3段階が階段状に上っていく様子を示した図

この3段階に共通しているのは、後の段階に進むほど「ツールを入れること」から「組織のやり方を変えること」に重心が移っていく点です。ツール導入はあくまで1段階目の一部にすぎず、2段階目・3段階目まで進んで初めてマーケティングDXが実務として機能し始めると当社は考えています。以下、それぞれの段階で当社が実務上意識しているポイントを補足します。

データ整備段階で意識すべきこと

この段階でつまずきやすいのは、「まず全社統合基盤を作ろう」といった大きすぎるスコープから着手してしまうことです。当社では、いきなりCDPのような統合基盤の導入を目指すのではなく、まず「どの数字を、誰が、どこで確認しているか」を洗い出すところから始めることを勧めています。広告費・流入経路・商談化率など、業務上の意思決定に直結するデータから優先順位をつけて整備すれば、統合基盤がなくても「見るべき数字が分かる」状態には近づけます。全部門のデータを一度に統合しようとして頓挫するより、意思決定に直結するデータから着手し、範囲を広げていく方が現実的だというのが当社の実感です。

業務プロセスの見直し段階で意識すべきこと

データが整備できても、それを見て「誰が」「何を基準に」判断するのかが決まっていなければ、業務プロセスは変わりません。この段階では、既存の業務フローの中から、担当者の経験と勘に依存している判断を洗い出し、どの判断からデータに基づく仕組みに置き換えるかを決めます。あわせて、前章で触れた「何が変わったら成功と言えるのか」という基準、つまりKPI(重要業績評価指標)・KGI(重要目標達成指標)をこの段階で具体化しておくことが欠かせません。基準がないまま業務プロセスだけを変えても、変更後に効果が出ているかどうかを検証できないためです。

組織能力の構築段階で意識すべきこと

業務プロセスの見直しが特定の担当者のスキルや熱意に依存している状態では、その担当者が異動・退職した時点で元のやり方に戻ってしまいます。この段階では、データを見る習慣や判断の基準をドキュメント化する、定型的な確認作業は仕組み化して属人化を解消する、といった対応を通じて、担当者が変わっても回る状態を目指します。当社自身がこの段階で実践してきた具体例は次章でご紹介します。

マーケティングDX推進担当者が最初にやるべきことチェックリスト

マーケティングDXを任された担当者が、何から手をつければよいか分からず止まってしまうケースを当社はよく見てきます。前章の3段階を実務に落とし込むために、最初の着手点として以下のチェックリストをお勧めしています。

  • 自社が使っているマーケティング関連のツール・システムを洗い出し、それぞれが持っているデータの種類を一覧にしたか
  • 現状、どの業務判断が「担当者の経験と勘」に依存しているかを具体的に挙げられるか
  • ツールを新たに導入する前に、そのツールでどの業務プロセスをどう変えるかを言語化したか
  • 「何が変わったら成功と言えるか」という判断基準(KPI・KGI)を、ツール導入や業務プロセスの見直しに着手する前に決めたか
  • 業務プロセスの見直しを、特定の担当者の裁量ではなく、異動があっても引き継げる形(手順書・仕組み化)で進める計画があるか
  • 経営層・情報システム部門・マーケティング現場の間で、進め方について共通認識ができているか

このチェックリストの多くにチェックが付かない場合、ツールの選定よりも先に、社内のデータと業務プロセスの現状把握から始めることを当社はお勧めします。

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生成AIの登場でマーケティングDXはどう変わったか

生成AIの登場は、マーケティングDXの必要性をさらに強めたというのが当社の実感です。

これまでのマーケティングDXは、データを整備し、人がそのデータを見て判断するという前提で語られることが多かったように思います。生成AIが業務の一部を代替できるようになったことで、データ整備の重要性はむしろ高まっています。データが整理されていなければ、AIに任せられる範囲を広げることもできないからです。裏を返せば、5章で整理した3段階のうち、データ整備と業務プロセスの見直しが済んでいない企業ほど、生成AIを導入しても効果が限定的になりやすいということでもあります。

一方で、AI活用の具体的な手法やツールの選び方については、本記事の範囲を超えるテーマです。マーケティング業務ごとのAI活用の詳しい進め方はマーケティング組織のAI化とは?進め方と活用領域マップで、業務別の具体的な事例は生成AIのマーケティング活用事例|業務別ユースケース集でご紹介していますので、あわせてご参照ください。

実際にmalna社内で起きた変化

当社自身も、業務プロセスを見直す中でデータ整備とAI活用を組み合わせてきました。具体的な削減時間や削減率のような数値は、実際に計測できていない範囲まで断定することになるためここでは挙げませんが、直接観察できる変化として、いくつかの業務が以前とは異なるやり方に置き換わっています。

例えば、クライアント別の広告パフォーマンスレポートは、以前は担当者が数値を集計してレポートを作成していましたが、今は自動生成される仕組みに切り替わっています。また、広告費の立替額とクライアントへの請求額の突き合わせも、以前は人が個別に照合していたものが、今は自動照合の仕組みで行う形に変わっています。商談や社内会議の音声についても、以前は参加者が手元でメモを取っていましたが、今は自動で文字起こし・要約される仕組みが日常的に使われています。

これらは施策の話ではなく、日次・月次の業務プロセスをどう組み直すかという、まさにマーケティングDXの実務にあたる部分だと当社は捉えています。

ガラス製のホワイトボードに描かれた図を指しながら説明するビジネスパーソン
ガラス製のホワイトボードに描かれた図を指しながら説明するビジネスパーソン

マーケティングDXでよくある失敗パターン

当社が支援の現場で見てきた失敗パターンには、いくつかの共通点があります。

  • 経営層の号令だけで現場の業務フローが変わらない:「DXを推進する」という方針が示されても、現場の日々の業務プロセスにまで落とし込まれず、掛け声だけで終わってしまうケースです。経営層が「何を」「いつまでに」変えるのかを具体的に示さず現場に丸投げしてしまうと、担当者は既存の業務を回しながら新しい取り組みに手を付ける余力を持てません。
  • ツールの選定基準が「機能の多さ」に偏る:自社のどの業務プロセスを変えたいかが定まらないまま高機能なツールを選んでしまい、使いこなせる範囲がごく一部にとどまってしまうケースです。導入時のデモでは魅力的に見えた機能の大半が、実際の運用フェーズでは使われないまま契約更新を迎えることも珍しくありません。
  • データ整備を後回しにして分析・自動化から着手する:土台となるデータが整っていない状態でAI活用や自動化に着手すると、精度の低い判断を積み重ねることになりがちです。入力データの粒度や更新頻度がバラバラなまま自動化の仕組みを組んでしまうと、後から気づいたデータの不備を仕組み全体にわたって修正する手戻りが発生します。
  • 成功の判断基準を決めずに進める:KPI・KGIを決めないまま業務プロセスの見直しに着手すると、施策後に「結局うまくいったのか」を誰も判断できません。判断基準がないまま推進すると、担当者の主観的な手応えだけが評価材料になり、次の投資判断の根拠が積み上がっていかないという問題が生じます。
  • 担当者の異動で仕組みが止まる:業務プロセスの見直しが特定の担当者の頭の中にしか残っておらず、異動や退職をきっかけに元のやり方に戻ってしまうケースです。

最後に挙げた「担当者の異動で仕組みが止まる」は、当社自身も気をつけている点です。例えば記事の更新齢やスパムバックリンクの確認といったSEOの棚卸し業務は、以前は特定の担当者が思い出したタイミングで確認する属人的な形でしたが、今は定期実行の仕組みに乗せることで、担当者が変わっても止まらない状態にしています。業務プロセスの見直しは、属人化を仕組みに置き換えるところまで進めて初めて定着すると当社は考えています。

これらに共通しているのは、「何を導入するか」ではなく「どの業務プロセスを、どの順番で、誰が責任を持って変えるか」を先に決めていないという点です。マーケティングDXを進める際は、ツールを選ぶ前にこの順番を整理しておくことが欠かせないと当社は考えています。前章のチェックリストは、この順番を整理するための出発点としてご活用いただけます。

DX推進の成果を確認するマーケティング担当者
DX推進の成果を確認するマーケティング担当者

よくある質問

Q1. マーケティングDXとは何ですか? データとデジタル技術を活用して、マーケティングの業務プロセス・組織体制・顧客への向き合い方を変革し、競争上の優位性を築いていく取り組みのことです。ツールの導入自体はその手段の一つであり、目的ではないと当社は考えています。

Q2. デジタルマーケティングとマーケティングDXの違いは何ですか? デジタルマーケティングはWeb広告やSNS運用など個別の施策・手法を指す言葉です。一方でマーケティングDXは、そうした施策を支える業務プロセスや組織の意思決定の仕方そのものを変革する取り組みを指します。個別施策を積み重ねるだけでは、マーケティングDXが進んだとは言えないというのが当社の理解です。

Q3. マーケティングDXの課題は何ですか? 当社が支援の現場で見てきた課題は、データが部門やツールごとに分散したまま連携されていないこと、そしてツール導入の判断と現場の業務プロセスの見直しが別々に進んでしまうことです。ツールを増やす前に、データの一元化と業務プロセスの見直しをセットで検討する必要があると考えています。

Q4. マーケティングDXを進める重要性は何ですか? 生成AIの普及により、業務の一部をAIに任せられる範囲が広がっています。その前提として、データが整理され、業務プロセスが見直されていることが欠かせません。マーケティングDXが進んでいない状態では、AI活用の効果も限定的になりやすいと当社は考えています。

Q5. マーケティングDXは何から始めればよいですか? まず、社内のツール・データの現状把握から始めることを当社は勧めています。6章のチェックリストを使い、どの業務判断が経験と勘に頼っているか、判断基準(KPI・KGI)が決まっているかを確認するのが最初の一歩です。社内だけでは現状把握や業務プロセスの設計を進めにくい場合は、外部の支援会社と一緒にデータ整備や業務プロセスの見直しを進めるという選択肢もあります。

さいごに

マーケティングDXは、ツールを導入することそのものではなく、データ整備・業務プロセスの見直し・組織能力の構築という3段階を通じて、マーケティングのやり方そのものを変えていく取り組みだと当社は考えています。まずは6章のチェックリストを使って、自社のデータと業務プロセスの現状を確認するところから始めていただければと思います。

当社では、マーケティング部門のデータ整備・業務プロセスの見直しに関するご相談を承っています。「何から手をつければよいか整理したい」という段階でも、ぜひお気軽にご相談ください

マーケティング組織全体のAI化の進め方については、マーケティング組織のAI化とは?進め方と活用領域マップ【総論・ピラーページ】で、業務別の具体的な事例は生成AIのマーケティング活用事例|業務別ユースケース集で、汎用ツールの選び方はマーケティングAIツールおすすめ比較|無料ツール・選び方でそれぞれご紹介しています。

自社のAI導入・AI活用について相談したい場合は、企業からのご相談もご検討ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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