AIタレント名鑑

コラム

飲食業でAI活用人材をどう使うか:シフト・原価・販促の切り分け方

多店舗展開の飲食チェーンや個店運営会社を対象に、シフト作成・発注・原価計算・口コミ対応といった店舗運営の事務作業のうちAI活用人材へ任せられる範囲と、食品衛生・アレルギー情報のように有資格者と本部が担うべき範囲を、厚生労働省・消費者庁・日本フードサービス協会の公表資料をもとに整理します。

公開日:2026年7月26日

執筆・編集:malna編集部(編集方針

飲食業でAI活用人材をどう使うか:シフト・原価・販促の切り分け方

シフト表の作成と、食物アレルギーに関するお客様への回答は、どちらも店長のタスクリストに並んでいますが、間違えたときに起きることの重さがまったく違います。飲食業の店舗運営では、AIに任せられる事務作業と任せてはいけない判断が同じ現場に同居しています。本稿では、多店舗展開する飲食チェーンと個店の運営会社を対象に、AI活用人材へ任せられる工程と、食品衛生・アレルギー情報のように有資格者や本部が責任を持つべき工程を、公表資料の数値をもとに分けて整理します。

統計で見えるのは「宿泊業,飲食サービス業」の姿

飲食業の事務作業がなぜ膨らむのかは、雇用の形からある程度説明できます。ただし前提として、以下で引く公的統計は飲食店単独では表章されておらず、いずれも宿泊業を含む産業分類「宿泊業,飲食サービス業」の数値です。飲食店の実態そのものを表す数字ではないという条件つきで読んでください。

厚生労働省「毎月勤労統計調査」2025(令和7)年12月分結果確報(事業所規模5人以上)によると、宿泊業,飲食サービス業のパートタイム労働者比率は78.42%で、調査産業計の31.51%を大きく上回り、表章されている全産業のなかで最も高い水準です。労働者総数4,677千人のうち、一般労働者は1,009千人、パートタイム労働者は3,668千人となっています(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025年12月分結果確報」第3表 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/2512r/2512r.html )。

一人あたりの働き方も他産業と異なります。同じ2025年12月分の第2表では、宿泊業,飲食サービス業の就業形態計の月間総実労働時間は88.9時間、出勤日数は13.5日で、調査産業計の134.6時間・17.4日を下回ります。パートタイム労働者に限ると65.6時間・11.7日で、調査産業計の79.0時間・13.5日よりさらに短くなっています(出典:同上 第2表)。

この11.7日という数字は宿泊業を含む分類の平均であり、飲食店の平均出勤日数として扱うことはできません。読み取れるのは、パートタイム労働者比率が全産業で最も高い分類に飲食サービス業が含まれているという事実までです。そのうえで、短時間・少日数の勤務者を多数組み合わせて日々の営業を成立させている店舗が相当数あると考えられ、その場合シフト作成が重いのは店長の段取りの問題というより組み合わせの数から生じている、という見方ができます。自社が実際にどうかは、産業平均ではなく自社の勤怠データで確認してください。

人の入れ替わりも、同じ分類で高い水準が示されています。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」では、宿泊業,飲食サービス業の令和6年の入職率は28.4%、離職率は25.1%で、産業計の入職率14.8%・離職率14.2%のおよそ2倍です。就業形態別では、パートタイム労働者の入職率33.3%・離職率29.9%がいずれも産業のなかで最も高く、一般労働者でも入職率21.2%・離職率18.1%と高い部類に入ります。実数では、同産業の入職者1,211.0千人のうち844.4千人がパートタイム労働者です(出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」2 産業別の入職と離職 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/kekka_gaiyo-02.pdf )。これも宿泊業を含む数値ですが、採用と初期教育が一過性のイベントではなく常時走り続ける業務になりやすい産業だという方向は示しています。

店舗運営で繰り返し発生する事務作業

店舗で発生する事務作業を、発生の仕方と負荷の出方で整理すると次のようになります。施設形態や本部機能の有無で分担は変わるため、あくまで整理の一例です。

業務発生の性質負荷の出方
シフト作成・調整週次または半月ごと、加えて当日の欠員対応人数が多く出勤日数が少ないほど組み合わせが増える。在留資格に応じた就労時間の上限や、就労できる場所・業態の制限がある従業員がいれば確認工程が加わる。当日変更は店長に集中する
アルバイト採用(募集文・応募対応・面接調整)通年で継続発生離職率の高さから常時発生し、繁忙期ほど採用と運営が同時に重なる
新人教育・オペレーション説明入店のたびに発生口頭伝達に依存すると店舗ごとに内容がぶれ、再教育が発生する
発注・在庫確認・棚卸日次・週次・月次数え直しと転記が混ざり、営業時間外に押し込まれる
原価計算・メニュー改廃時の再計算価格改定・季節メニューのたびレシピ単位の積み上げが必要で、改廃が増えるほど再計算が増える
日報・売上報告の本部提出毎日店舗で手書き・表計算に入力し、本部で再集計する二度手間が起きやすい
口コミ・SNSへの対応随時投稿の確認と返信文の作成が属人化し、店舗ごとに対応品質が割れる
販促(クーポン・季節メニュー告知)の制作月次・季節ごと本部が作る場合も店舗が作る場合も、原稿づくりが締切直前に集中する

この一覧に調理・接客そのものは含まれていません。いずれも情報を集めて所定の形に整える作業であり、店舗での判断や技能とは切り離せます。

価格改定の常態化が計算のやり直しを増やしている

原価計算とメニュー改廃の負荷は、この数年でとくに増えています。日本フードサービス協会が会員社を対象にまとめた「外食産業市場動向調査 令和7年(2025年)年間結果報告」によると、2025年は円安を背景に物価高・原材料高が続き、外食でもメニュー価格改定が断続的に行われたことから、客単価上昇(前年比104.3%)が売上の押し上げ要因となり、全店データの売上は前年比107.3%となりました。店舗数は100.7%、客数は102.9%です。業態別の売上前年比は喫茶109.8%、ファーストフード107.5%、ファミリーレストラン107.2%、ディナーレストラン106.6%、パブレストラン/居酒屋104.0%と、すべての業態で前年を上回りました(出典:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 令和7年(2025年)年間結果報告」 https://www.jfnet.or.jp/wp/wp-content/uploads/2026/01/nenkandata-2025.pdf )。同報告は同時に、消費者の節約志向がさらに強まっているとも指摘しています。

売上の伸びが客単価の上昇に支えられているということは、価格を動かす判断が繰り返し発生しているということでもあります。価格を一度動かすたびに、レシピ単位の原価の見直し、メニュー表・POSマスタ・販促物の更新、店舗への周知がまとめて発生し、多店舗になるほど本部側の作業量として跳ね返ります。

シフトには在留資格の確認が組み込まれている

シフト作成を自動化の対象として考える前に、外国人従業員の在留資格を確認する工程が入っているかを見てください。ここを飛ばした素案をそのまま使うと、法令違反が店舗側の責任として跳ね返ります。

出入国管理及び難民認定法第19条第1項は、別表第一の在留資格をもって在留する者について、同条第2項の許可を受けて行う場合を除き、当該在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を行ってはならないと定めています。同条第2項が定めるこの許可が、いわゆる資格外活動許可です(出典:e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」第19条 https://laws.e-gov.go.jp/law/326CO0000000319 )。

出入国在留管理庁は、「留学」の在留資格に係る資格外活動許可のうち包括許可について、1週について28時間以内(教育機関の長期休業期間にあっては1日について8時間以内)の収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を行う場合に必要となる許可だと説明しています。「家族滞在」の在留資格に係る包括許可も1週について28時間以内とされており、こちらには長期休業期間に関する記載はありません(出典:出入国在留管理庁「「留学」の在留資格に係る資格外活動許可について」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00003.html 、同「「家族滞在」の在留資格に係る資格外活動許可について」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00004.html )。

制限されているのは時間だけではありません。出入国在留管理庁は、企業等の名称・所在地・業務内容等を個別に指定しない包括的許可について、「原則1週に28時間以内であること及び活動場所において風俗営業等が営まれていないこと」を条件とすると説明しています(出典:出入国在留管理庁「資格外活動の許可(入管法第19条)」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/shikakugai_00001.html )。この条件の根拠である出入国管理及び難民認定法施行規則第19条第5項第1号は、許可される活動から、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項に規定する風俗営業、同条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業または同条第11項に規定する特定遊興飲食店営業が営まれている営業所において行うものを除くと定めています(出典:e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法施行規則」第19条 https://laws.e-gov.go.jp/law/356M50000010054 )。

この除外は飲食業と無関係ではありません。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項第1号の風俗営業には、キャバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興または飲食をさせる営業が挙げられています。同項第2号は喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業のうち営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの、同項第3号は同様の営業のうち他から見通すことが困難で広さ5平方メートル以下の客席を設けて営むものを指します。同条第11項の特定遊興飲食店営業は、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る)で、午前6時後翌日の午前0時前の時間においてのみ営むもの以外のものと定義されています(出典:e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122 )。接待を伴う店舗や、深夜に酒類を提供して客に遊興をさせる業態を運営している場合、週28時間の枠に収めたシフトを組んでいても、その営業所で就労させること自体が包括許可の範囲外になりうるということです。

自社のどの店舗がこれらに当たるかは、営業形態・設備・営業時間の実態によって判断が分かれます。ここは自己判断で切り分けず、所管の地方出入国在留管理官署や行政書士等の専門家に確認してください。

上限を超えるシフトを組んだ場合、罰則は働いた本人だけの問題では終わりません。入管法第73条の2第1項は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者を3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。同条第2項は、当該外国人が資格外活動許可を受けていないことなどを知らなかったことを理由に処罰を免れることはできない(過失のないときを除く)としています(出典:同上 第73条の2)。知らなかったという説明が原則として通らない構造だということです。

したがって、AIにシフト素案を出させる運用にするなら、在留資格ごとの就労時間の上限と長期休業期間の切り替えを条件として組み込まない限り、その素案は使えません。そして条件を渡せば足りるわけでもありません。就労させようとしている店舗の業態が資格外活動許可の範囲外となる営業に当たらないかの確認、在留カードによる在留資格と資格外活動許可の確認、実際の労働時間の記録と管理、上限に近づいた従業員の検知と対応は、AIの出力にもAI活用人材にも委ねず、社内の責任者が担う工程として残してください。自社の店舗が該当しうる業態かどうか、複数の勤務先で働いている従業員をどう取り扱うかといった個別の判断が必要な点は、所管の地方出入国在留管理官署や行政書士等の専門家に確認してください。

AIに任せられる業務と、任せてはいけない領域

飲食業の業務をAI活用人材への適性という観点で分けると、次のように整理できます。店舗数・本部機能・提供形態によって線引きは変わるため、自社の実態に合わせて調整することを前提にしてください。

業務AIへの適性任せ方前提・注意点
シフト作成のたたき台づくり高い希望収集から素案生成までのフロー設計を任せられる労働時間・休憩の法令要件に加え、在留資格に応じた就労時間の上限の確認と実労働時間の管理、自店の業態が資格外活動許可の範囲外となる営業に当たらないかの確認、最終確定は社内の責任者が担う
アルバイト求人原稿・スカウト文の作成高い媒体別の原稿量産と改善サイクルの設計職業安定法上の明示事項と的確表示の要件を社内が確認してから掲載する
日報・売上報告の入力と集計高い入力フォーマットの設計と自動集計まで店舗側の入力の入口をデータ化するところから始める
新人向けオペレーションマニュアルの整備高い既存の口頭ルールの文書化と更新フローづくり衛生・調理手順の記載内容は本部が確認する
口コミ・SNSの一次分類と返信文の下書き高い分類ルールの設計と返信テンプレートの整備公開前の確認を必ず残す。個別クレームの判断は社内が行う
販促物・季節メニュー告知の原稿作成高い原稿の初稿作成とバリエーション出し景品表示法上の表現確認は社内が担う
発注・在庫データの集計と異常値の検知集計の自動化と気づきの提示まで発注量の最終判断は店舗・本部が行う
原価計算・メニュー別収支の可視化計算シートの整備と更新フローの構築レシピ・歩留まりの前提条件は現場が確定させる
衛生管理計画・衛生記録の内容判断低いAIの出力とAI活用人材の判断には委ねない食品衛生責任者と本部が責任を負う領域。保健所や食品衛生の専門家への相談は別途行う
アレルギー情報のお客様への回答低いAIの出力とAI活用人材の判断には委ねない誤りが人命に直結する。厨房の実態を把握した担当者が所定の手順で回答する

ここで「委ねない」と書いているのは、AIが出力した内容と、食品衛生や労務の専門家ではないAI活用人材の判断に最終決定を預けないという意味です。社労士・行政書士・食品衛生の専門家といった有資格の外部専門家に確認を取ることは、むしろ推奨される工程です。

高い・中の区分にある業務も、成果物をそのまま外に出す前提では設計しません。とくに口コミへの返信と販促原稿は社外に出る文章であり、AI活用人材が作るのは確認前の下書きだという位置づけを最初に共有しておく必要があります。

求人原稿をAIで量産する場合は、掲載前の確認項目を先に決めておく必要があります。職業安定法第5条の3第1項は、労働者の募集を行う者等に対し、募集に応じて労働者になろうとする者へ、従事すべき業務の内容および賃金、労働時間その他の労働条件を明示することを義務づけています。同法第5条の4第1項は、広告等により募集に関する情報を提供するときに虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないと定め、同条第2項は、労働者の募集を行う者等が当該情報を正確かつ最新の内容に保たなければならないとしています(出典:e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の3・第5条の4 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141 )。明示すべき事項の具体的な内容は職業安定法施行規則第4条の2第3項に定められており、従事すべき業務の内容に関する事項(変更の範囲を含む)、労働契約の期間、試みの使用期間、就業の場所に関する事項(変更の範囲を含む)、始業・終業の時刻や休憩時間・休日に関する事項などが並びます(出典:e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」第4条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012 )。時給や勤務地を店舗ごとに差し替えて原稿を量産するほど、実態とずれた記載や更新漏れが生まれやすくなります。掲載前に社内が確認する項目として固定してください。

ここまでの内容を、自社の依頼として整理してみませんか

課題が固まっていない段階でも、実務でAIを使える人材への依頼内容を一緒に整理できます。

費用感と進め方を相談する

衛生管理とアレルギー情報は最初に切り離す

飲食業でAI活用を進めるときに、線引きを曖昧にしてはならないのが衛生管理とアレルギー情報です。

体制面では、食品衛生法施行規則 別表第十七(第六十六条の二第一項関係)の一「食品衛生責任者等の選任」において、営業者は食品衛生責任者を定めることと規定されています(出典:e-Gov法令検索「食品衛生法施行規則」 https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100023 )。ただし、責任者を選任していれば足りるという運用ではありません。

厚生労働省は、令和3年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになったと説明しています。同省が示す「営業者が実施すること」は、(1)「一般的な衛生管理」および「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図る、(2)必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等について具体的な方法を定めた手順書を作成する、(3)衛生管理の実施状況を記録し、保存する、(4)衛生管理計画および手順書の効果を定期的に(および工程に変更が生じた際等に)検証し、必要に応じて内容を見直す、の4点です。小規模な営業者等向けの資料や、食品等事業者団体が作成した業種別手引書も公開されています(出典:厚生労働省「HACCP(ハサップ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html )。

つまり衛生管理は、計画・手順書・記録・検証という継続的な運用です。「衛生記録の整備をAIに任せる」と言うとき、任せられるのは記録様式の整備、記入漏れを検知する一次チェックの仕組み、記録の保存と検索を成立させる設計といった器の部分に限られます。危害要因をどう捉えるか、計画の内容が自店の工程と合っているか、検証の結果として何を見直すかという判断は、選任された食品衛生責任者と本部が担う領域です。AIが生成した衛生管理計画や記録の文面を、内容を確認しないまま運用に載せる前提で設計してはいけません。

アレルギー情報については、義務表示の話と外食の現場対応を分けて考える必要があります。消費者庁は、健康危害の発生を防止する観点から特定原材料を定め、容器包装された加工食品について当該特定原材料を含む旨の表示を義務付けていると説明しています。特定原材料は固定ではなく、2026年4月1日にはカシューナッツが追加されています(出典:消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/ )。ただし表示の切替が即日で完了する扱いにはなっていません。同日付の消費者庁食品表示課事務連絡「アレルゲンを含む食品に関する表示について」は、食品表示基準を改正して特定原材料にカシューナッツを追加したことを示したうえで、「2年間の経過措置期間を設けていますが、可能な限り速やかに表示に努めるよう御指導願います」としています(出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品に関する表示について(令和8年4月1日事務連絡)」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_260401_03.pdf )。自社が扱う商品でいつまでに切り替えるかは、この事務連絡と消費者庁の通知を確認したうえで判断してください。この表示義務が向けられているのは容器包装された加工食品であり、店内でその場で提供する料理の説明そのものを規律する枠組みではありません。中食・テイクアウトでも、容器包装に入れられた状態で販売するかどうかで扱いが変わりうるため、自社の提供形態がどちらに当たるかは所管の保健所に確認してください。

外食・中食について消費者庁が整備しているのは、表示の様式ではなく情報提供の進め方を扱う動画教材とパンフレットです。事業者向けパンフレットは、取組の必要性、取組状況、誤食の事例と注意点、食物アレルギーの症状と原因食物、緊急時対応を扱っています。消費者向けパンフレットには、外食・中食での情報提供、原因食物(アレルゲン)の意図しない混入(コンタミネーション)への注意、誤食の事例などが掲載されています(出典:消費者庁「外食・中食での食物アレルギーについて」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/efforts/ )。

外食で管理すべき論点は、表示欄の文言よりも運用側にあります。仕入先の変更やメニューの原材料変更をいつ誰が把握するか、同じメニューでも店舗によって仕入先が違う場合にどう扱うか、調理器具や揚げ油、共通の作業台を介した混入をどう説明するか、症状が出たときに誰がどう動くか。いずれも厨房の実態を知る人間でなければ答えられません。メニューの原材料一覧をデータとして整理すること自体はAI活用人材が支援できる工程ですが、そのデータをお客様への回答としてそのまま提示する仕組みは作らないでください。原材料が変わったときに誰がデータを更新し、誰が回答するかを先に決め、更新されていないデータが回答に使われない構造にすることが前提になります。

本部と店舗の分断をどこで埋めるか

多店舗展開の運営会社では、本部が集計したい情報と店舗が持っている情報の形が合わず、その差を人力の再入力で埋めている状態がよく見られます。店舗で紙や表計算に書いたものを本部が打ち直しているなら、AIツールを入れる前に、どの情報をどこでデータとして受け取るかという入口の設計から着手する必要があります。入力がデータになっていない限り、AIに渡せるものがそもそも存在しないためです。

この設計を誰がやるのかが、飲食業では詰まりやすい部分です。日本フードサービス協会の調査が示すとおり価格改定が断続的に発生し、入職と離職が通年で回り続けている状況では、店舗側にも本部側にも「いまの回し方を一度止めて組み替える」時間が空きません。店長がプレイングマネージャーとして現場に立っている運営会社では、この役割を店長の空き時間に期待しても構造的に成立しません。ツールを選ぶ前に、業務の入口を設計する担当者を確保するところが実質的な出発点になります。

着手順序:毎日発生して判断を含まない業務から

現実的な進め方は、影響範囲が小さく毎日発生し、衛生・法令の判断を含まない業務から始めることです。日報と売上報告の入力・集計、アルバイト求人原稿の作成、口コミの一次分類あたりは、店舗のオペレーションに触れずに着手できます。次にシフト作成のたたき台づくりとオペレーションマニュアルの整備へ広げ、発注・原価計算は現場が前提条件を確定させたうえで扱う順序が無理がありません。

店舗に落とし込む段階では、店長が営業中の現場に立ったままでも回る手順にできるかが分かれ目になります。本部で設計した運用が店舗に届かず戻ってしまう典型的な理由は業務改善のAI活用を現場に定着させる進め方で扱っています。効果の判定は、削減できた時間が仕込み・教育・採用のどこに戻ったかまで追わないと成立しません。シフト作成や日報集計にかけていた時間を着手前に記録しておくことが前提になります。指標の置き方はAI活用のROIをどう継続測定するかで整理しています。繁忙期と閑散期の落差が大きい飲食業では、外部人材への依頼もいきなり固定の稼働量を決めず、週1日程度から試して範囲を絞り込む進め方が現実的だと考えられます。稼働量の目安は週1日のAI人材活用で何が変わるかにまとめています。

まとめ

飲食サービス業を含む産業分類「宿泊業,飲食サービス業」は、パートタイム労働者比率78.42%、離職率25.1%という水準にあります。飲食店単独の数値ではありませんが、短時間で入れ替わりの多い人員を組み合わせて営業を成立させている店舗が相当数あることは読み取れます。そこにシフト作成・採用・教育・記録といった事務作業が積み上がり、価格改定の常態化が原価計算とメニュー更新の再作業を上乗せしています。AI活用人材に最初に依頼すべきは、ツールの選定よりも、店舗で発生する情報をどこでデータとして受け取るかという入口の設計です。

一方で切り離すべき領域もはっきりしています。シフトは、外国人従業員の在留資格と資格外活動許可の就労時間上限を確認し、実労働時間を管理する工程を社内の責任者に残したうえでなければ自動化できません。資格外活動許可には活動場所に関する制限もあり、風俗営業等が営まれている営業所での就労は包括許可の範囲外です。週28時間の枠に収めることと、自社の店舗の業態が範囲外に当たらないことは別の確認であり、後者は所管の地方出入国在留管理官署や行政書士等への確認が必要です。HACCPに沿った衛生管理は計画・手順書・記録・検証の継続運用であり、記録の器を整えることと内容を判断することは別の工程です。アレルギー情報のお客様への回答は、誤りが人命に直結するため、AIの出力や、食品衛生・労務の専門家ではないAI活用人材の判断に委ねる前提では設計しません。入管法・食品衛生法・食品表示・職業安定法に関わる判断は、食品衛生責任者および所管行政庁や有資格の専門家の確認を経てください。

AI活用人材への依頼を相談する

課題整理の段階から、実務でAIを使える人材の活用方法を相談できます。

  • 相談した時点で契約は発生しません。
  • ご紹介にあたっての手数料は利用規約 第11条に記載しています。
  • ご紹介は、書類と面談で実務のAI活用経験を確認した人材に限られます。