コラム
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは。統合で何が変わったか
2026年、中小企業新事業進出補助金とものづくり補助金が統合され「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になりました。3つの枠の違い、補助上限額、そして申請前に1〜3週間かかる準備事項を公募要領から整理します。
公開日:2026年7月28日
執筆・編集:malna編集部(編集方針)
「ものづくり補助金を使いたい」と調べ始めると、公式サイトで新規の公募が見つからず戸惑うことになります。2026年、この制度は中小企業新事業進出補助金と統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という新しい制度になりました。 本記事では、統合で何が変わったのか、3つの枠の違い、そして申請前に必ず時間がかかる準備事項を、公募要領の記述に沿って整理します。
本記事は2026年7月28日時点の第1回公募要領(1.1版)に基づいています。締切・制度内容は変更されるため、申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
何が統合されたのか
旧・中小企業新事業進出補助金の公式サイトには、次のように明記されています。
本補助金の公募は終了しております 新規の受付は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」まで
(出典: 中小企業基盤整備機構「中小企業新事業進出補助金」 https://shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp/ )
新制度の第1回公募は2026年6月29日に開始されました。実施主体は独立行政法人中小企業基盤整備機構です(出典: 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」 https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/ )。
旧称で検索して古い情報にたどり着くケースが多い時期です。参照している情報がいつ時点のものかを確認してから読むことをおすすめします。
3つの枠
| 枠 | 概要 | 補助上限額(カッコ内は賃上げ特例適用時) |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 従来のものづくり補助金に相当 | 6〜20人 1,000万円(1,250万円)/21〜50人 1,500万円(2,500万円)/51人以上 2,500万円(3,500万円)。補助下限額100万円 |
| 新事業進出枠 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援 | 従業員規模に応じて最大7,000万円(9,000万円) |
| グローバル枠 | 海外展開を伴う事業 | 新事業進出枠と同水準 |
補助率は、革新的新製品・サービス枠で中小企業者1/2(地域別最低賃金引上げ特例適用時は2/3)、小規模企業・小規模事業者および再生事業者が2/3です(出典: 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領(1.1版)」 https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/assets/documents/shinmono_application_guidelines_01.pdf )。以下、枠の定義・基本要件・準備事項の引用はすべて同要領によります。
補助事業実施期間は、革新的新製品・サービス枠が交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)と定められています。
新事業進出枠には「新規性」の定義がある
新事業進出枠は、単に新しいことを始めれば対象になるわけではありません。公募要領は次の二つを求めています。
①事業で新たに製造又は提供する製品、商品もしくはサービスが、事業を行う中小企業等にとって、新規性を有するもの、かつ、②事業で新たに製造等する製品等の属する市場が、事業を行う中小企業等にとって、新たな市場であるもの
そして明確な除外規定があります。
過去に製造等していた製品等を再製造等することは、新たな製品等を製造等しているとは言えず、補助対象外です。
一度やめた事業の再開は対象外ということです。ここは計画段階で判断が分かれやすい部分です。
達成が求められる数値
補助事業終了後3〜5年の事業計画で、次の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 基準 | 未達の場合 |
|---|---|---|
| 付加価値額 | 年平均成長率 4.0%以上 | — |
| 一人当たり給与支給総額 | 年平均成長率 3.5%以上 | 補助金返還義務あり |
付加価値額は「営業利益、人件費、減価償却費を足したもの」と定義されています。年平均成長率(CAGR)は複利計算で算出します。
賃上げ要件は未達だと返還義務が生じます。 補助金を受け取って終わりではなく、3〜5年にわたって給与を上げ続ける計画を立てることになります。この点を織り込まずに申請すると、後年に負担が来ます。
申請前に1〜3週間かかる準備がある
実務でいちばん事故が起きやすいのがここです。公募要領は準備事項について明確に警告しています。
GビズIDプライムアカウント
GビズIDプライムアカウントの発行には、1週間程度時間を要します。GビズIDプライムアカウントの取得手続きの遅れによる申請期限の延長等は一切認められません
一般事業主行動計画
本補助金の申請には、「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画の策定・公表が必要になります。 一般事業主行動計画の公表手続きには1〜2週間程度の期間を要します。(中略)遅れによる申請期限の延長等は一切認められません
合計すると、書類を書き始める前に2〜3週間の事前準備が要る計算です。締切を見てから動き始めると間に合いません。
公募要領が申請代行コンサルに触れている
この公募要領には、支援業者について踏み込んだ記述があります。
補助金の活用にあたっては、会社全体の事業計画と連動していることが非常に重要です。近年、会社全体の事業計画を踏まえず、補助金獲得のみを目的として申請支援を行うコンサルティングが数多く見受けられます。会社全体の事業計画の策定支援等は、よろず支援拠点等の公的支援機関でも相談窓口がございますので、利用を検討ください。
制度側が公的な無料窓口の利用を勧めている点は注目に値します。よろず支援拠点は全国47都道府県に設置されており、無料で相談できます(都道府県別の相談先はこちら)。
また、事業計画作成支援者がいる場合は、支援者名・支援内容・報酬額・契約期間の入力が必須とされており、未入力は不採択・採択取消の対象になります。
旧・ものづくり補助金の採択率(参考)
統合前のものづくり補助金の実績です。割合は当方が公表値から計算したもので、公式が採択率として公表している数値ではありません。
| 公募回 | 応募 | 採択 | 割合(当方計算) |
|---|---|---|---|
| 19次 | 5,336 | 1,698 | 約31.8% |
| 20次 | 2,453 | 825 | 約33.6% |
| 21次 | 1,872 | 638 | 約34.1% |
| 22次 | 1,552 | 582 | 約37.5% |
(出典: 全国中小企業団体中央会「ものづくり補助事業公式ホームページ 採択結果」 https://portal.monodukuri-hojo.jp/saitaku.html )
3割台で推移しており、デジタル化・AI導入補助金の通常枠(約4割)や省力化投資補助金の一般型(6〜7割)と比べて厳しい水準です。統合後の第1回は採択発表が2027年1月予定のため、実績はまだありません。
まとめ
ものづくり補助金と中小企業新事業進出補助金は統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になりました。旧称のままの解説記事が多く残っている時期なので、情報の日付に注意が必要です。
実務上のポイントは三つです。新事業進出枠には新規性の定義があり、過去に手掛けた事業の再開は対象外であること。賃上げ要件は未達だと返還義務が生じること。そしてGビズIDと一般事業主行動計画の準備に合計2〜3週間かかり、遅れは一切考慮されないこと。
締切から逆算すると、書類作成に入る前の準備期間を確保できるかが最初の分岐点になります。
事業計画そのものの整理は、まずよろず支援拠点などの公的窓口で無料相談するのが公募要領でも勧められています。そのうえで、AI活用や業務の自動化をどう組み込むかを具体化したい場合は、企業からのご相談もご検討ください。オンラインでの打ち合わせを基本としつつ、必要に応じて訪問しての対応も可能です。
なお本記事は公募要領の記述を整理したものであり、個別の申請可否や要件該当性の判断は、公式サイトおよび専門家にご確認ください。
