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コラム

広告代理店・制作会社でAI活用人材をどう活かすか:運用型9割時代の社内業務の切り分け方

レポーティングの量産、クリエイティブの初稿制作、提案資料と競合調査といった広告会社自身の社内業務を対象に、AI活用人材へ任せられる工程と、提案判断・表現の最終責任として社内に残す工程の線引きを、電通・総務省・消費者庁・厚生労働省の公表資料をもとに整理します。

公開日:2026年7月26日

執筆・編集:malna編集部(編集方針

広告代理店・制作会社でAI活用人材をどう活かすか:運用型9割時代の社内業務の切り分け方

広告代理店・広告制作会社は、AI活用を顧客に提案する側の業種です。そのため社内でAIの話をすると、たいてい「クライアントにどう提案するか」の議論に流れます。本稿はその話ではありません。扱うのは自社の社内業務、つまりレポーティング、クリエイティブの初稿制作、提案資料や競合調査、入稿・設定の確認といった、受注した仕事を回すために毎月発生している工程です。顧客提供価値としてのAIと、自社の業務量を減らすためのAIは、必要な体制も投資判断も別物として設計する必要があります。

市場構造が業務量の形を決めている

電通の推定によると、2025年の日本の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)で、4年連続の過去最高でした。このうちインターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)となり、総広告費に占める構成比は50.2%と初めて過半数に達しています。一方でマスコミ四媒体広告費は2兆2,980億円(前年比98.4%)とほぼ横ばいでした(出典:電通「2025年 日本の広告費」https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011003.html )。

より重要なのは内訳です。インターネット広告媒体費3兆3,093億円を取引手法別に見ると、運用型広告が2兆9,352億円(前年比112.5%)で、媒体費に占める構成比は88.7%に達しています。予約型広告は3,042億円、成果報酬型広告は699億円にとどまります。広告種別ではソーシャル広告が1兆3,067億円(前年比118.7%、媒体費に占める構成比39.5%)、ビデオ(動画)広告が1兆275億円(前年比121.8%)で、動画広告は推定開始以降初めて1兆円を超えました(出典:CARTA HOLDINGS/電通/電通デジタル/セプテーニ「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html )。

予約型は枠を買って掲載する取引ですが、運用型は入札条件とクリエイティブを継続的に調整し続ける取引です。取引額の9割近くが後者に寄ったということは、案件が終わらない構造に業界全体が移行したことを意味します。加えてインターネット広告制作費は4,922億円(前年比104.0%)へ増加しており、電通はその理由として動画広告の制作本数の拡大を挙げています(出典:電通「2025年 日本の広告費」https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011003.html )。

つまり社内では、担当クライアント数 × 媒体数 × クリエイティブ本数 × 更新頻度という掛け算で作業が発生します。売上が伸びても人員は同じ比率では増やせないため、この掛け算の一部を機械側に寄せる以外に稼働を平準化する方法は残りにくいと考えられます。

業務量がどこに溜まっているか

広告会社の業務は、クライアントに対する提案・判断そのものと、その提案を成立させるために発生する情報処理に分かれます。後者は担当者ごとに分散して発生するため、総量が可視化されにくいという性質があります。

業務発生の性質負荷の出方
運用レポートの作成(週次・月次)クライアント数 × 媒体数 × 頻度で発生数値の転記と体裁調整に時間が取られ、考察を書く時間が最後に圧縮される
クリエイティブの初稿制作(バナー・縦型動画・コピー案)案件ごと、検証サイクルごとに複数本検証本数を増やすほど比例して増え、繁忙期に集中する
提案資料・オリエン返し新規・既存の提案の都度構成の組み立てより、素材集めと作図に時間が流れやすい
競合調査・市場情報の収集提案・戦略見直しの都度収集と整理が属人化し、成果物が組織に蓄積されにくい
入稿・アカウント設定・計測まわりの確認配信開始時と変更のたび確認項目が多く、チェックの抜けが直接事故につながる
打ち合わせの議事録・社内共有週次定例・随時記録が残らないと確認の往復が増える
媒体費の立替精算・請求処理月次媒体ごとに明細形式が異なり、突合作業になりやすい

この7つに、戦略の立案とクライアントへの提案そのものは含まれていません。いずれも情報を集めて所定の形に整える工程であり、判断とは切り離せます。AI活用人材が関与できるのはこの領域です。

AIに任せられる工程と、社内に残す領域

上記を、AI活用人材への適性という観点で整理すると次のように分けられます。線引きは扱う媒体・クライアントの業種・社内の体制によって変わるため、あくまで整理の一例です。

業務AIへの適性任せ方前提・注意点
運用レポートの数値集計・定型コメントの下書き高い集計基盤の構築と自動更新まで外部人材に任せやすい考察と次月方針の提案は運用担当が書く
打ち合わせ議事録の作成・要点整理高い録音からの要約と共有フォーマット化クライアント情報の取り扱い範囲を事前に決める
競合調査・市場情報の一次収集と整理高い収集・分類・要約までを任せられる出典の実在確認と解釈は社内が行う
クリエイティブの初稿・コピー案の量産高い訴求軸を渡して案出しまでブランド適合の判断に加え、著作権・商標・意匠・不正競争防止法・肖像権やパブリシティ権・素材ライセンス・契約上の保証までを対象とした権利確認を、法務・知財の工程として社内に残す
提案資料のたたき台・作図高い構成案に沿った初稿作成まで提案の骨子と価格・条件の判断は社内が担う
入稿・設定チェックリストの整備と一次点検確認項目の言語化とチェック自動化の仕組みづくり配信開始の最終承認は担当者が行う
媒体費の明細突合・請求データの整形突合ルールの設計と自動化まで金額の確定と請求発行は社内の経理フローに残す
広告表現の法規制まわりの一次スクリーニング表現候補の洗い出しと注意喚起のフラグ立てまでフラグが立たないことは適法の確認にならない。最終承認は法務・薬事の専門部署や専門家が行う
クライアントへの提案判断・予算配分の決定低い非専門のAI活用人材やAIの出力に丸投げしない成果責任と契約に直結する領域
表現・ブランドの最終責任と入稿可否の決定低い非専門のAI活用人材やAIの出力に丸投げしない(法務・薬事・知財など専門家への確認は別に必ず通す)法令違反・権利侵害・炎上のリスクを負う判断

分かれ目は「間違えたときに誰が責任を負うか」です。レポートの集計を間違えれば作り直せますが、優良誤認にあたる表現や他者の権利を侵害する素材をそのまま入稿すれば、責任はクライアントと広告会社に残ります。AI活用人材の役割は、判断に使える時間を増やすことであって、判断を代替することではありません。なお「社内に残す」とは非専門のAI活用人材やAIの出力に判断を丸投げしないという意味であり、法務・薬事・知財といった専門家に外部から確認を受けることは、むしろ積極的に組み込むべき工程です。

表現の法規制と権利侵害のチェックは工程として残す

広告会社が他業種と決定的に違うのは、成果物が法規制の直接の対象になり、同時に他者の権利を侵害し得る創作物でもある点です。ここはAIに寄せてはいけない領域として、明示的にルール化しておく必要があります。

景品表示法では、令和5年10月1日から、広告であることが一般消費者に分からない表示、いわゆるステルスマーケティングが不当表示として規制されています。規制の対象となるのは商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、企業から依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象になりません。また、対象はSNS投稿やレビュー投稿といったインターネット上の表示に限らず、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌等の表示も含まれます(出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing )。ただし、行政処分の直接の名宛人が広告主であることは、広告会社が無関係でよいという意味ではありません。表示を企画し、制作し、出稿するのは広告会社であり、規制に触れる設計をしてしまえば、広告主との契約上の責任や損害の負担、取引関係とレピュテーションへの影響という形で戻ってくると考えられます。法令上どこが処分対象かという論点と、実務上どこが管理責任を負うかという論点は、分けて設計してください。

根拠資料の扱いについては、消費者庁が令和6年9月26日に公表した「No.1表示に関する実態調査報告書」が実態を示しています。同報告書によれば、No.1表示等を見たことがある消費者のうち約5割が、これらの表示が購入の意思決定に「かなり影響する」または「やや影響する」と回答しています。一方で、ヒアリング対象となった広告主15社のうち、アンケートの質問内容や比較対象として選定された競合他社といった調査の中身まで把握していたのは1社だけでした。報告書には、調査会社が「不当表示のリスクが無いよう、No.1の裏付けとなる合理的な根拠を取得し納品します」と記載した説明資料を配布していた事例も記載されています(出典:消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」令和6年9月26日 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/survey/assets/representation_cms216_240926_02.pdf )。外部から納品された根拠をそのまま信頼した結果、中身を誰も確認していない状態が生まれていたことになります。AIが生成した訴求コピーやその裏付けをそのまま通す運用は、これと同じ構造を社内に作ることになります。

医薬品・化粧品・健康食品などを扱う場合はさらに重くなります。医薬品等適正広告基準は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及びソーシャル・ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告を対象としており、広告を行う者の責務として、広告主、広告媒体等、医薬品等の広告業務に従事する者がそれぞれの立場から正確な情報の伝達に努めることを求めています(出典:厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf )。制作を受託した広告会社も名指しで責務の対象に含まれています。

重要なのは、規制がかかるのは薬機法まわりだけではないという点です。クライアントの業種によって、広告表現そのものに別の業法が重なります。条文の見出しだけを挙げても、金融商品取引法第37条(広告等の規制)、保険業法第300条第1項(保険契約の締結等に関する禁止行為。第6号は他の保険契約と比較して誤解させるおそれのある事項を告げ、または表示する行為を禁じています)、宅地建物取引業法第32条(誇大広告等の禁止)、職業安定法第5条の4(求人等に関する情報の的確な表示)、貸金業法第15条(貸付条件の広告等)および第16条(誇大広告の禁止等)、健康増進法第65条(誇大表示の禁止)、特定商取引に関する法律第11条(通信販売についての広告)および第12条(誇大広告等の禁止)があります(出典:デジタル庁 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/ )。個別にどこまでが許容されるかは業種・媒体・表示内容によって変わるため、本稿では判断基準までは扱いません。実務として押さえるべきは、担当するクライアントの業種にどの業法がかかるかを案件の着手時点で確認し、その確認をAI活用人材の作業範囲の外側に置くことです。金融、保険、不動産、人材・求人、貸金、健康食品、通信販売といった領域を扱う案件では、この確認先を先に決めてから制作に入る運用が要ります。

法規制と並んで重いのが権利侵害です。生成AIが出力した画像やコピーは、既存の著作物や登録商標にたまたま近づくことがあります。文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は、生成AIによる生成物についても、生成・利用段階で既存の著作物との類似性および依拠性が認められれば、著作権者が生成行為や利用行為を著作権侵害に当たるとして差止請求や損害賠償請求を請求し得るとし、故意による著作権侵害には刑事罰の適用があり得ると整理しています。さらに同文書は、開発の際にAI利用者が知り得なかった著作物を含む大量のデータを用いている生成AIを利用する場合があり、こうした利用はAI利用者が認識し得ない著作物に基づいたものを生成する可能性があるとも指摘しています(出典:文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」令和6年3月15日 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf )。同文書は法的な拘束力を有するものではなく、特定の生成AIについて確定的な法的評価を行うものではないと自ら位置づけていますが、制作者が「見たことがない」と考えていても侵害の主張を受ける可能性は残る、という前提で運用を組む必要はあります。商標についても、商標法第37条第1号は、指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用に加えて、指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用も、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなすと定めています(出典:デジタル庁 e-Gov法令検索「商標法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127 )。指定商品・指定役務そのものと同一の範囲だけを見ればよいわけではなく、それに類似する商品・役務についての使用まで射程に入る点に注意が要ります。日本広告業協会のAIポリシーも、憲法や知的財産関連法令、個人情報保護法をはじめとする関連法令の遵守を会員各社に促すことを掲げ、安全性の項目で「不確かな情報の流通や著作権への抵触リスクなどの危険性を理解し、安全性を可能な限り担保したうえでの活用に努める」としています(出典:一般社団法人日本広告業協会「日本広告業協会 AI ポリシー」https://www.jaaa.ne.jp/wp-content/uploads/2024/05/jaaa_ai-policy_240510.pdf )。

したがって、AI活用人材に任せる範囲は初稿・コピー案の量産までとし、他者の権利を侵害していないかの確認は、法務・知財の担当部署が担う工程として社内に残してください。

その際、見る範囲を著作権と商標だけに絞らないことが重要です。広告制作では、少なくとも次の論点が同時に立ちます。ここでは個別の要件までは扱わず、確認先を決めておくべき対象として挙げます。

  • 著作権:既存の著作物との類似性・依拠性
  • 商標権:登録商標および類似する商標の使用(商標法)
  • 意匠権:製品や画像デザインの形状に関わる権利(意匠法)
  • 不正競争防止法:他者の商品等表示・商品形態に関わる表示や模倣
  • 肖像権・パブリシティ権:人物の顔・姿・氏名の使用に関わる論点。これらを直接定める単独の法律はなく、本稿では法的な位置づけには立ち入らないが、確認先を決めておくべき対象に含まれる
  • 素材ライセンス:ストック写真・イラスト・フォント・音源・テンプレートの利用規約。商用利用の範囲、生成AIへの入力や学習利用の可否、クレジット表記や再配布の条件
  • 契約上の保証:クライアントとの契約に含まれる権利の非侵害保証や補償条項、生成物の権利帰属の取り決め

決めるべきは、これらの論点を誰に確認するか、誰が・どの段階で・何をもって権利侵害チェックを完了とするか、そしてそのチェックを通らない初稿が入稿・納品に進まない導線です。「著作権と商標だけ見た」状態をチェック完了と呼ばない、という線引きを先に置いてください。個別の生成物が権利を侵害するかどうか、どの論点がどこまで問題になるかの判断は、弁護士・弁理士など専門家への確認を推奨します。受託制作物の権利をクライアントに引き渡す前提で契約している以上、生成物の権利処理を曖昧にしたまま納品する運用は取れません。取り決めるべき項目はクリエイティブ×AI人材への依頼で確認すべき著作権・権利関係で整理しています。

法規制の側に戻ると、一次スクリーニングの読み方が最大の設計ポイントになります。AIは問題になり得る表現を拾い漏らすことがあり、フラグが立たなかったことは適法であることの確認にはなりません。現場が「フラグゼロ=チェック済み」と受け取る運用に流れると、導入前より確認が薄くなるという逆転が起こり得ます。これを防ぐには、AIの出力の有無とは切り離して、対象となる表現は法務・薬事の担当部署や専門家の承認を経てから入稿する、という承認プロセスを別建てで固定することです。AIの出力は承認を省略する根拠ではなく、承認する側が見るべき箇所を先に絞り込むための材料にすぎません。運用上は、誰がいつ何を確認したかの承認記録を案件ごとに残し、AIのフラグ有無とは独立に承認の有無を管理すると、通し漏れを検知できます。チェック工程を省くための導入ではなく、チェックすべき箇所を早く可視化するための導入だと位置づけたほうが、結果的に事故は減ると考えられます。

ここまでの内容を、自社の依頼として整理してみませんか

課題が固まっていない段階でも、実務でAIを使える人材への依頼内容を一緒に整理できます。

費用感と進め方を相談する

顧客提供と自社業務を混同しない

広告会社にとって難しいのは、AIが商材でもあり社内ツールでもあることです。顧客提供の文脈では、成功事例として語れるか、提案の武器になるかが評価軸になり、新規性の高い取り組みが優先されがちです。一方、自社業務の文脈で効くのは毎週必ず発生する地味な工程です。レポートの集計、議事録、明細の突合は提案書には書けませんが、担当者の残業には直結します。評価軸が混ざると後者が常に後回しになります。

体制面のずれもあります。顧客提供のAI活用は案件として予算と工数が確保されますが、自社業務のAI化は誰かの空き時間に押し込まれます。稼働が埋まっている運用担当や制作担当に空き時間での仕組み化を頼む形になり、月内でも入稿前後に山谷が動く広告会社ではまず進みません。閑散期に仕組みを作れる担い手を薄くでも常置できるかどうかが分岐点になります。

止まっている理由は技術ではなく役割の空白

広告会社でAI活用が進まない理由は、ツールの性能ではないと考えられます。運用型が媒体費の88.7%を占め、ビデオ(動画)広告が1兆275億円(前年比121.8%)まで伸び、インターネット広告制作費も動画広告の制作本数の拡大により4,922億円(前年比104.0%)へ増えている以上、制作と更新の物量は放っておいても積み上がります。それでも仕組み化が進まないのは、増えた物量のどこをどう機械側に寄せるかを決めて実装まで持っていく役割が、社内に置かれていないからです。運用担当も制作担当も、その日の配信と納品で稼働が埋まっています。制作会社を含め中小規模の事業者が多い業界であることも効いていると考えられます。総務省「令和7年版 情報通信白書」は、日本の中小企業では生成AIの活用方針について「方針を明確に定めていない」との回答が約半数を占め、大企業と比較して方針の決定が立ち遅れている状況が見て取れるとしています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112220.html )。方針が決まっていない状態では、担当を割り当てる根拠もつくれません。

もう一つは、確認の設計が速度に追いついていないことです。先に触れたNo.1表示の実態調査で、根拠となる調査の中身まで把握していた広告主が15社中1社だったという結果は、外部から納品されたものを確認せずに通す構造が業界にあることを示しています。納品元が調査会社からAIに変わっても、この構造は同じです。制作の速度を上げる前に、誰が何を確認したら通してよいのかを決めておく必要があります。

業界としての方向性も出ています。日本広告業協会は2024年5月にAIポリシーを公表し、公平性の担保について「人間の判断の介在による提供・利用に努める」こと、プライバシー・機密情報の保護について会員各社における広告主はじめ各取引先との機密情報の保護に努めることを掲げています。人間の判断を最後に置く前提と、クライアント情報の取り扱い範囲を先に決める前提は、業界団体の方針としても示されている考え方です。

着手順序:毎週必ず発生する工程から

現実的な進め方は、判断に触れず、頻度が高く、成果物の形が決まっている工程から始めることです。運用レポートの数値集計と定型部分の下書き、議事録の要約、競合調査の一次収集がこれにあたります。いずれも提案内容そのものには踏み込まないため、事故のリスクが小さく、削減できた時間も測りやすい工程です。

次にクリエイティブの初稿量産と提案資料のたたき台へ広げます。ここからはブランド適合、表現の可否、権利侵害の有無が絡むため、誰がどの段階で確認するかを先に決めておく必要があります。入稿・設定チェックや媒体費の突合、法規制まわりの一次スクリーニングは、承認プロセスを別建てで固定したうえで最後に扱う順序が無理がありません。

効果の確認では、レポート作成にかかっていた時間、初稿到達までの日数、提案資料の準備工数などを着手前に記録します。広告会社の場合、削減時間そのものよりも、レポート提出から次の打ち手を出すまでの日数や、月内に回せた検証本数のほうが変化として見えやすいと考えられます。測定の設計はAI活用のROIをどう継続測定するかで扱っています。

体制としては、繁忙期に人を増やす前提を置かず、閑散期に仕組みを作る担い手を週1日程度から置く形が現実的です。稼働の山谷が月内で動く業種での置き方や依頼範囲の決め方は週1日のAI人材活用で何が変わるかで整理しています。

まとめ

広告会社の業務量は、運用型広告が媒体費の88.7%を占め、動画広告が1兆円を超えるという市場構造の変化に押される形で、終わらない更新作業として積み上がっています。負荷が溜まっているのは戦略や提案そのものではなく、レポートの集計、初稿の量産、資料と調査の準備、明細の突合といった情報処理の工程で、この領域はAI活用人材に切り出せます。

一方で、クライアントへの提案判断、予算配分の決定、表現の最終責任は社内に残す領域です。とくに広告表現のチェックは二重に設計してください。ひとつは法規制で、AIには一次スクリーニングまでを担わせ、フラグが立たなかったことを適法の確認とは扱わず、景品表示法・薬機法に加えて金融商品取引法、保険業法、宅地建物取引業法、職業安定法、貸金業法、健康増進法、特定商取引法など業種ごとにかかる法令の最終判断は、法務・薬事の専門部署や専門家の承認を必ず通す運用にします。もうひとつが権利侵害で、生成された画像やコピーについて、著作権・商標のほか意匠、不正競争防止法上の論点、肖像権やパブリシティ権、ストック素材やフォント・音源のライセンス条件、クライアントとの契約上の保証までを対象に含めた確認を、法務・知財が担う工程として初稿と入稿のあいだに固定します。著作権と商標だけを見た状態をチェック完了と扱わないことが要点です。ここでいう「社内に残す」は非専門のAI活用人材やAIの出力に判断を丸投げしないという意味であり、専門家への確認は省くのではなく組み込む対象です。本稿は公表資料に基づく整理であり、個別の表現が法令に適合するかどうか、また権利を侵害しないかどうかの判断に代わるものではありません。そして、顧客に提供するAIの話と自社の業務量を減らすAIの話を分けて設計することが、この業種では最初の一歩になります。

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課題整理の段階から、実務でAIを使える人材の活用方法を相談できます。

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