コラム
マーケティング業務の自動化・効率化はどこから着手すべきか
AIに任せる「判断業務」とコードに落とす「決定論業務」の切り分け方、着手の順番7ステップ、セキュリティ・個人情報の注意点をmalna自身の実践を交えてご紹介します。
公開日:2026年8月9日
執筆・編集:malna編集部(編集方針)

「マーケティングの業務を自動化したい」「AIを使って効率化を進めたい」と考えても、実際に何から手をつければいいのか迷う方は多いのではないでしょうか。当社(malna)では、Claude Codeをはじめとした生成AIを社内の日常業務に組み込みながら、広告レポートの作成から会議の文字起こしまで、さまざまな業務の自動化を進めてきました。本記事では、その実務を通じて見えてきた「マーケティング業務の自動化・効率化はどこから着手すべきか」という問いに、当社なりの設計思想を交えてお答えします。
マーケティング業務の自動化とは
マーケティング業務の自動化とは、これまで人が手を動かして行っていたマーケティング関連の作業を、ツールやAIに任せて自動的に処理できるようにすることを指します。メール配信やリード育成に特化したMA(マーケティングオートメーション)ツールもその一部ですが、当社が実務で扱っている自動化の対象は、それよりも広い範囲に及びます。広告レポートの作成、広告費の照合、会議の議事録づくり、記事のレビュー、SEOの定期点検など、マーケティング組織の中で繰り返し発生する業務のほとんどが対象になり得ると当社は考えています。
MAツールの導入を扱う記事の多くは、導入前に目的とKPI(重要業績評価指標)を言語化しておくことの大切さを共通して指摘しています。これはMAツールに限らず、マーケティング業務全体の自動化にもそのまま当てはまる考え方です。「なぜこの業務を自動化するのか」「自動化した結果、何が改善されればよいのか」を先に言葉にしておかないと、着手した後で「思っていた効果と違う」という判断のずれが起きやすくなります。この点は後述の着手ステップで改めて扱います。
MAツール自体の機能や選び方については、MAシナリオ設計にAIを使う方法で詳しく扱っています。本記事では「マーケティング業務全体をどう自動化していくか」という、より広い視点での着手順に絞ってお伝えします。
「AIに全部任せよう」でつまずいた当社の経験
当社がClaude Codeを全社導入した当初、正直に言うと「AIに任せれば何でも自動化できるのではないか」という期待が先行していました。実際には、判断が絡む業務をいきなり丸ごとAIに渡そうとすると、出力のブレを人が毎回チェックする手間が発生し、かえって工数が増えてしまう場面がありました。
一方で、集計やフォーマットの変換、決まった手順の繰り返しといった業務は、AIに「毎回考えさせる」のではなく、コード(スクリプトや仕組み)に落とし込んでしまった方が、圧倒的に安定して速く回ることに気づきました。この経験から、当社は「AIに何を任せ、何をコードに任せるか」を最初に切り分けることを、自動化に着手する前の必須ステップとして扱うようになりました。
恥ずかしながら、この切り分けに気づく前は「AIが自動化してくれるはず」という期待だけが先行し、出力の精度が安定しない業務にまでAIを使おうとして、結局は人がチェックし直す二度手間が発生していました。今振り返ると、判断業務と決定論業務を区別しないまま自動化を進めようとしたことが、遠回りの原因だったと感じています。
設計思想|AIに任せる「判断業務」とコードに落とす「決定論業務」
マーケティング業務の自動化を進める上で、当社が最も重視しているのが「判断業務」と「決定論業務」の切り分けです。少し聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単に言うと「そのつど考える必要がある仕事」か「毎回同じ手順で終わる仕事」かの違いだと捉えていただければと思います。
判断業務とは、状況によって最適な答えが変わり、文脈の理解や経験に基づく評価が必要な業務です。例えば、広告クリエイティブの良し悪しを見極める、記事の文章表現を整える、顧客からの問い合わせ内容を読み解いて対応方針を決める、といった業務が当てはまります。こうした業務は、AIエージェントに「考えさせる」形で任せるのに向いています。
決定論業務とは、手順があらかじめ決まっており、同じ入力に対して同じ処理をすればよい業務です。データの集計、ファイルの形式変換、定期的な通知、既存の値同士の突合作業などが当てはまります。こうした業務は、AIに毎回判断させるのではなく、コードとして固定してしまった方が、速度も安定性も上がります。
| 観点 | 判断業務(AIに任せる/そのつど考える仕事) | 決定論業務(コードに落とす/毎回同じ手順で終わる仕事) |
|---|---|---|
| 特徴 | 状況によって最適解が変わる | 手順があらかじめ決まっている |
| 向いている業務例 | クリエイティブの評価、文章の推敲、問い合わせ対応方針の検討 | データ集計、フォーマット変換、定期通知、金額の突合 |
| 実行の主体 | AIエージェント(Claude等)が都度考える | スクリプト・自動化の仕組みが決まった処理を実行する |
| 失敗したときのリスク | 出力のブレを人が確認する前提で設計する必要がある | 想定外の入力があると処理が止まりやすいため、異常時の検知が必要 |
| 当社の位置づけ | 「任せて確認する」業務 | 「作ってしまえば回り続ける」業務 |

この切り分け方は当社独自の主張だけではなく、自動化の設計を扱う他の解説でも、判断が絡む処理と機械的な処理を分けて考えるという同様の整理が見られます。当社では、この考え方をマーケティング業務に当てはめて実務に落とし込んでいます。
マーケティング業務のより具体的な仕分け例
判断業務と決定論業務は、実際のマーケティング業務に当てはめるとどう分かれるのか、当社が実務で扱っている範囲でもう少し具体的に見ていきます。
判断業務に分類できる業務の例:
- 広告クリエイティブやバナーの訴求内容が、ターゲットに刺さっているかどうかの評価
- SEO記事・広告文・LP(ランディングページ)のコピーの表現を整える推敲作業
- 問い合わせ内容や商談メモを読み解き、次のアクションの方向性を判断する作業
- 複数案あるキャッチコピーや構成案の中から、目的に合うものを選ぶ判断
- 会議の議事録から、対応が必要な論点とそうでない論点を仕分ける作業
決定論業務に分類できる業務の例:
- 広告媒体(Google広告・Meta広告等)から出力される数値データの集計・レポート化
- 広告費の立替額とクライアントへの請求額の突合(金額が一致しているかの確認)
- 会議音声から文字起こしテキストを生成する処理そのもの
- CSVやスプレッドシートのフォーマット変換、ファイルの命名・格納
- 指標が一定のしきい値を超えたときに、担当者へ通知を飛ばす仕組み
- 記事の公開日・更新日が一定期間を超えたものを定期的に洗い出す棚卸し処理
すべての業務がこの二つにきれいに分かれるわけではありません。例えば「広告レポートの数値をもとに次月の予算配分を決める」という業務は、数値の集計自体は決定論業務ですが、配分の意思決定は判断業務です。このように一つの業務の中に両方の性質が混ざっている場合、当社では業務を工程単位まで分解し、集計・整形の部分はコードに、意思決定の部分はAIまたは人が担当する形で切り分けています。工程を分解せずに業務単位のまま「AIに任せるか、人がやるか」を決めようとすると、この混在に気づかず、判断が必要な部分までAIに丸投げしてしまう失敗につながりやすいため、注意が必要です。
着手の順番|7つのステップ
当社では、マーケティング業務の自動化に着手する際、以下の順番で進めています。
- 目的とKPIを言語化する:何のためにこの業務を自動化するのか、自動化した結果として何が改善されればよいのかを、着手前に言葉にしておきます。目的が曖昧なまま進めると、後になって「効果があったのかどうか」を判断する基準がなくなってしまいます。
- 業務を棚卸しする:日々の業務を洗い出し、誰が・何を・どのくらいの頻度でやっているかを一覧化します。
- 判断業務か決定論業務かを仕分ける:前述の観点に沿って、それぞれの業務がどちらに近いかを分類します。工程単位まで分解し、混在している業務は切り分けます。
- 優先順位をつける:棚卸しした業務すべてに同時に着手することはできません。当社では「工数(1回あたりどれくらい時間がかかるか)」と「頻度(どれくらいの頻度で発生するか)」の2軸で業務を並べ、工数も頻度も大きい業務から着手することをおすすめしています。
| 頻度:高い | 頻度:低い | |
|---|---|---|
| 工数:大きい | 最優先で着手(削減効果が最も大きい) | 次点(効果は大きいが発生機会が少ない) |
| 工数:小さい | 積み上げで着手(件数が多く塵も積もる) | 後回しでよい(費用対効果が見合いにくい) |
このマトリクスはタスク管理で使われる重要度×緊急度の考え方を、自動化の着手判断向けに置き換えたものです。決定論業務の中でも「工数:大きい×頻度:高い」に当てはまるものから着手すると、投じた工数に対する効果が見えやすくなります。
- 決定論業務から着手する:手順が固定されている業務は、失敗したときの影響を予測しやすいため、先に自動化に取り組みます。決定論業務からいきなり着手すべき理由は、手順が明確な分、期待通りに動いているかどうかの検証がしやすいためです。判断業務からいきなり着手すると、期待していた成果と実際の出力がずれていても、その原因が「AIの判断」なのか「そもそもの業務設計」なのか切り分けにくく、改善のサイクルが回りにくくなります。
- 異常時の検知と通知、そして役割分担を先に設計する:自動化した仕組みが失敗したときに、誰にも気づかれないまま止まり続けることが最も避けたい事態です。エラー時の通知先を決めるとともに、「誰がこの自動化の仕組みに責任を持つのか」「異常が起きたとき誰が対応するのか」という役割分担も、運用を始める前に決めておきます。マーケティング部門だけで完結しない自動化(例えば営業やカスタマーサポートに関わるデータを扱う場合)は、関係部署とあらかじめ担当を決めておくことが欠かせません。
- 判断業務は小さく試してから広げる:AIに任せる判断業務は、影響範囲の小さい業務から試し、出力の精度やブレの傾向を確認したうえで対象を広げていきます。
自動化に着手する前に確認しておきたい注意点|セキュリティと個人情報
マーケティング業務の自動化は、顧客データやリード情報など、個人情報を含むデータを扱う場面が少なくありません。効率化のスピードを優先するあまり、この点への配慮が後回しになってしまうと、思わぬトラブルにつながります。当社が自動化の設計時に必ず確認している観点を整理します。
- 利用目的を明確にする:個人情報を取得・利用する際は、その利用目的が具体的でなければなりません。自動化の仕組みに個人情報を組み込む場合も、当初の利用目的の範囲内かどうかを確認する必要があります。
- AIに入力するデータを絞る:分析や生成に不要な個人情報は、AIへの入力から外します。顧客名や連絡先といった直接特定できる情報は、マスキングや匿名化をしたうえで扱うのが基本です。
- 利用するAIサービスのデータ取り扱い方針を確認する:データの保存期間、学習利用の有無、アクセス権限の設定は、サービスによって異なります。契約しているプランの仕様を必ず確認し、不明な場合はベンダーに問い合わせることをおすすめします。
- 社内のルールを言語化しておく:「どのデータは自動化の対象にしてよいか」「どの情報はAIに入力してはいけないか」を、担当者の判断任せにせず、社内ルールとして明文化しておきます。
個人情報保護法や各種コンプライアンス対応の詳細な解釈は、法務・専門家への確認が必要な領域です。本記事では自動化に着手する際に押さえておきたい一般的な観点の紹介にとどめ、個別の法的判断については専門家にご相談いただくことをおすすめします。データ分析の観点でのマスキング・匿名化の具体的な手順は、マーケティングデータ分析に生成AIを使う方法でより詳しくご紹介しています。
当社で実際に動いている自動化の例
ここでは、当社が実際に社内で運用している自動化の一部をご紹介します。具体的な削減率や時間はあえて記載せず、以前と今とで何が変わったかという観察できる事実として記述します。
- 広告レポートの自動生成:クライアント別の広告パフォーマンスレポートは、以前は人が媒体の管理画面から数値を確認し、スプレッドシートに転記・集計してレポート化していました。今はこの一連の流れが自動生成される仕組みに切り替わっており、担当者は出来上がったレポートの数値の読み解きと、クライアントへの説明内容の検討に時間を使えるようになっています。実装の詳しい手順は広告レポート作成の自動化でご紹介しています。
- 広告費の月次照合:広告費はクライアントに代わって当社が一時的に立て替え、後日請求する形をとることが多く、立替額と請求額の突合を毎月人手で行っていました。今はこの突合を自動照合の仕組みで行い、金額が一致しない場合にだけ人が確認する運用に変わっています。
- 会議の文字起こし・要約:商談や社内会議の音声を自動で文字起こし・要約する仕組みが、日常的に使われています。以前は会議後に担当者が記憶を頼りに議事録を作成していましたが、今は文字起こしと要約が自動で用意され、担当者はその内容の確認と、対応が必要な論点の判断に集中できます。
- SEOの定期棚卸し:記事の更新の古さや、一次情報の鮮度、リンク切れといった観点を、定期実行の仕組みで確認しています。以前はまとまった時間を確保して手作業で記事一覧を確認していましたが、今は定期的に自動で洗い出されたリストをもとに、どの記事から手を入れるかという判断業務だけが残っています。
- 社内問い合わせ・日程調整の下支え:スケジュールの空き時間確認や社内ドキュメントの整理といった細かい業務を、都度AIに依頼して片付けています。空き時間の候補出しのような決定論寄りの作業をAIとスクリプトの組み合わせで処理し、最終的な日程の意思決定は人が行う形にしています。
- 記事執筆のレビュー体制:オウンドメディア記事の執筆時に、複数の視点(読者・マーケター・ライター・懐疑派・代表など)からのレビュー討議を経て改善する体制が、人手を都度介さない形で構築されています。以前は担当者が一人で執筆し、上長が都度チェックする流れでしたが、今は執筆の初期段階で複数視点のレビューが自動的に走り、明らかな抜け漏れや論理の弱い箇所が事前に指摘される仕組みになっています。社内の会議レビューやチェック体制を自動化したい場合の一例として、参考にしていただければと思います。
これらは当社自身の社内実践であり、クライアントへの支援実績としてご紹介しているものではありません。
メルマガ・ウェビナーの自動化は、まだこれからだと考えています
自動化を検討する際、メルマガの文面作成やウェビナーの運営準備といった業務も候補に挙がることがあります。これらは検索データを見ると、「メルマガ AI」「ウェビナー AI」といったキーワードでの検索ボリュームが、他の業務に比べてまだ十分に立っていない領域です。
とはいえ、検索需要が立っていないことと、業務として自動化する価値がないことは別の話だと当社は考えています。メルマガの下書き作成やウェビナーの告知文づくりも、判断業務と決定論業務に分解すれば、他の業務と同じ考え方で着手できます。例えば、メルマガであれば配信リストの抽出やスケジュール配信は決定論業務、文面のトーンや訴求内容の調整は判断業務に分けられます。ウェビナーであれば、申込者へのリマインド送付や参加者データの集計は決定論業務、当日の構成やQ&Aで想定される質問への準備は判断業務に近いと言えます。検索需要がまだ小さい業務は、無理に単独の記事にはしませんが、実務としては本記事の設計思想の対象に含めています。需要が明確になった時点で、改めて具体的な記事として切り出す予定です。

よくある質問
Q1. マーケティング自動化とMA(マーケティングオートメーション)ツールは同じものですか? 同じではありません。MAツールはメール配信やリード育成といった特定の業務に特化した自動化の仕組みです。本記事で扱う「マーケティング業務の自動化」は、MAツールが担う範囲に加えて、レポート作成やSEO点検、社内の細かい業務まで含めた、より広い範囲を指しています。
Q2. 自動化を進めると、マーケターの仕事はなくなりますか? 決定論業務として整理できる作業は減っていく一方、判断が必要な業務は残ると当社は考えています。当社自身の実感としても、集計や定型作業に費やしていた時間は減った一方で、AIの出力をどう評価し、どう活かすかという判断の比重は増えている感覚があります。仕事そのものがなくなるというより、業務の中身が変わっていくという理解が実態に近いと感じています。このテーマについては、マーケティングの仕事はAIでなくなるのかでより詳しく扱っています。
Q3. 何から着手すればいいですか? まず目的とKPIを言語化し、業務を棚卸しした上で、判断業務か決定論業務かを仕分け、優先順位をつけたうえで決定論業務から着手することを当社ではおすすめしています。詳しい手順は前述の着手ステップをご参照ください。
Q4. 自動化の費用はどれくらいかかりますか? ツール費・構築費・運用費など、内訳によって金額の考え方は変わります。費用の構造や費用対効果の考え方については、AI導入の費用はいくらかかるかで詳しく解説しています。
Q5. 個人情報を扱う業務を自動化しても大丈夫ですか? 一律に「大丈夫」とは言えず、利用目的の範囲内かどうか、AIに入力するデータを必要最小限に絞れているかどうかの確認が欠かせません。当社では自動化の設計段階で、前述の観点を必ずチェックしています。個別の法的な判断が必要な場合は、専門家に確認することをおすすめします。
Q6. 自動化にはどんなツールを使えばいいですか? 特定のツール名を一律におすすめすることは難しいと当社は考えています。まず自社の目的(データ分析を強化したいのか、コンテンツ生成を効率化したいのか、広告運用を最適化したいのか)を明確にした上で、既に使っているCRMやMAツール、広告プラットフォームとのデータ連携がスムーズに行えるかどうかを確認することをおすすめします。当社の場合は、判断業務にはClaude等のAIエージェント、決定論業務にはスクリプトによる自動化という組み合わせで対応しています。
さいごに
マーケティング業務の自動化は、「AIに任せられる範囲を広げること」だけを目指すと、かえって出力の確認作業に追われてしまうことがあります。当社が実務を通じて感じているのは、目的とKPIを先に言語化し、判断業務と決定論業務を切り分け、優先順位をつけたうえで決定論業務から着手するという順番の大切さです。あわせて、個人情報を扱う場面ではセキュリティの観点を後回しにしないことも欠かせません。
マーケティング組織全体のAI活用の全体像はマーケティング組織のAI化とは?進め方と活用領域マップで、業務別の具体的な事例は生成AIのマーケティング活用事例でご紹介しています。もし自社での自動化の進め方についてより具体的に相談したい場合は、ぜひ当社までお気軽にご相談ください。
私たち自身もまだ試行錯誤を続けている最中ですが、日々の運用の中で得た気づきを、これからも発信していきたいと思っています。
自社のAI導入・AI活用について相談したい場合は、企業からのご相談もご検討ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



